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整理解雇(リストラ)の裁判例

整理解雇(リストラ)に関する裁判例

整理解雇(リストラ)に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

外資系金融機関においても、整理解雇法理が適用されて、解雇が無効とされた事例(東京地裁令和3年12月13日判決)

本件は、年額4200万円という高額の給与支払いを受けていた外資系金融機関の労働者が整理解雇されたことについて、その有効性が問題となった事案です。

裁判所は、結論としては、整理解雇法理を適用した上で、人員削減の必要性が認め難いこと、原告に対する解雇回避措置(降格、賃金減額等)が得検討されていないこと、整理解雇の対象者について合理的な人選基準が認め難いこと等を理由として、解雇を無効と判断しました。

なお、被告は、外資系会社の雇用慣行を前提に、解雇無効との判断が与える悪影響等についても指摘しましたが、裁判所は以下のとおり述べてこれを排斥しました。

「なお、被告は、本件解雇が無効であるとの判断が示されれば、国際企業が日本におけるビジネスから撤退し、又は、日本において高い職位を設けないという結果を招きかねないなどとも主張する。しかしながら、以上の判断は、①原被告間の労働契約において、原告の担う職務や果たすべき職責、職務の遂行や職責に必要な能力、期待される評価等を限定する旨の合意があったと認めるに足りる証拠が提出されていないこと、②就業規則の内容が、整理解雇に当たって、配置転換や職位の降格等を検討することを予定したものになっていること、③被告が、本件解雇に至るまで、原告に対し、勤務評価において職務能力や勤務成績の不良を指摘せず、高額の賞与を支給し続けてきたこと、④シンジケーション本部の収益目標や被告代表者による忠告の具体的な時期・内容を認めるに足りる証拠が提出されていないこと等、本件における事実関係及びその基礎となる証拠関係を踏まえたものである。被告が指摘する懸念については、使用者において、国際企業における人事労務管理と整合する合理的な内容の労働契約や就業規則を締結又は制定するようにしたり、解雇の有効性を基礎づける事実を裏付ける客観的な資料を適切に作成し保存したりすること等によって対処することができるものであり、被告の上記主張を採用することはできない。」

新型コロナウイルスの感染拡大を理由とする整理解雇が無効とされた事例(福岡地裁令和3年3月9日決定)

本件は、主として観光バス事業を営む使用者が、新型コロナウイルスを契機とする業務縮小を理由に観光バスから高速バスへの業態転換を図ろうとしたことに際し、運転手を整理解雇したことの有効性が争点となりました。

裁判所は、仮処分申立てに対する決定という形ではありますが、以下のとおり述べ、整理解雇は無効と判断しました。

前記認定事実及び疎明資料(乙5)によれば,債務者は,新型コロナウイルス感染拡大によって,令和2年2月中旬以降,貸切バスの運行事業が全くできなくなり,同年3月中旬にはすべての運転手に休業要請を行う事態に陥ったこと,同年3月の売上は約399万円,同年4月の売上は約87万円であったこと,従業員の社会保険料の負担は月額150万円を超えていたこと,令和2年3月当時,雇用調整助成金がいついくら支給されるかも不透明な状況にあったこと等を考慮すると,その後,高速バス事業のために運転手2名を新たに雇用したことを考慮しても,債務者において人員削減の必要性があったことは一応認められる。
 しかしながら,債務者は,令和2年3月17日のミーティングにおいて,人員削減の必要性に言及したものの,人員削減の規模や人選基準等は説明せず,希望退職者を募ることもないまま,翌日の幹部会で解雇対象者の人選を行い,解雇対象者から意見聴取を行うこともなく,直ちに解雇予告をしたことは拙速といわざるを得ず,本件解雇の手続は相当性を欠くというべきである。
 また,債権者が解雇の対象に選ばれたのは,高速バスの運転手として働く意思を表明しなかったことが理由とされているところ,債務者は,上記ミーティングにおいて,高速バス事業を開始することを告知し,運転手らに協力を求めたものの,高速バスによる事業計画を乗務員に示し,乗務の必要性を十分に説明したとは認められないうえ,高速バスを運転するか否かの意向確認は突然であって,観光バスと高速バスとでは運転手の勤務形態が大きく異なり家族の生活にも影響することを考慮すると,当該ミーティングの場で挙手しなかったことをもって直ちに高速バスの運転手として稼働する意思は一切ないものと即断し,解雇の対象とするのは人選の方法として合理的なものとは認め難い。
 そうすると,本件解雇は,客観的な合理性を欠き,社会通念上相当とはいえないから,無効といわざるを得ない。

※いわゆる整理解雇の4要素(①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務、③解雇対象者たる人選の合理性④解雇手続きの相当性)のうち、①のみ肯定したものの、その他の点を否定したものと思われます。

大学学部の統廃合を理由として実施された整理解雇が無効と判断された事例(奈良地裁令和2年7月21日判決)

本件は、被告の運営する大学にて教員として就労する労働者らが、被告大学の学部の統廃合に伴い整理解雇ないし雇止めをされたことに対し、その有効性を争った事案です。

裁判所は、以下のとおり述べ、整理解雇は無効と判断しましたが、一部の労働者の雇止めに関しては有効と判断しました。

(6)検討
ア 原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4について
 上記(1)ないし(5)で検討したところによれば,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4に対する本件解雇は,無期労働契約を締結した労働者であり,しかも高度の専門性を有する大学教員に対する整理解雇であり,被告において,平成26年4月以降,本件大学のビジネス学部及び情報学部の学生募集を停止し,平成29年3月末時点で在籍する学生がほとんどいなくなって両学部の教員が過員状態となったという意味において,人員削減の必要性がある状況下でなされたものとは認められるものの,被告の財政状況が逼迫するなど経営破綻のおそれはなかったのであるから,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4を整理解雇するのであれば,かかる整理解雇を回避するため,希望退職の募集や転退職の支援,事務職員等への配置転換の希望を募るのみではなく,総人件費の削減に向けた賃金の切下げ等の検討や,平成26年に新たに開設された人間教育学部又は保健医療学部への異動の可能性について検討すべく,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4の専門分野や過去に担当した授業科目をも考慮に入れながら,平成29年度以降に人間教育学部又は保健医療学部で開講される科目の担当可能性を検討し,文部科学省によるAC教員審査で「可」の判定を受けるための手続を履践するなどの努力が求められていたというべきである。ところが,被告は,結局のところ,希望退職の募集と転退職の支援,事務職員等への配置転換の希望を募るにとどまり,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4の専門分野や担当できる科目の範囲を狭く捉え,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4において,人間教育学部又は保健医療学部で開講される科目を担当することはできないか,あるいは限られるものと即断し,両学部への異動の可能性の検討を一切しなかったものである。そして,本件解雇に至る本件組合等と被告との団体交渉における被告の対応は,平成28年7月26日成立の別紙3のあっせん合意の前後を通じて基本的に変わるものではなく,総人件費削減のための職員の賃金の切下げ等の提案や協議等がなされておらず,協議が尽くされたとはいい得るかは疑問が残るところである。
 そうだとすると,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4に対する本件解雇は,整理解雇法理における4要素を総合考慮しても,労契法16条所定の客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認めることはできないというべきである。
 したがって,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4に対する本件解雇は,労契法16条所定の要件を欠くものとして無効である。
イ 原告X5について
 原告X5に対する本件解雇についても,上記アで判示したところが妥当し,整理解雇としてみた場合には無効である。そして,原告X5に対する本件解雇は,労契法17条所定のやむを得ない事由があることが必要であるところ,同条所定のやむを得ない事由については,同法16条所定の客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認められる事由よりも厳格に解すべきであり,期間満了を待つことなく直ちに労働契約を終了せざるを得ないような特別な重大な事由であることが必要であると解するのが相当であるから,原告X5に対する本件解雇について,同法17条所定の事由があるものと認めることはできない。
 したがって,原告X5に対する本件解雇もまた無効というべきである。
ウ 原告X6ら2名について
 原告X6ら2名に対する本件雇止めについても,基本的には上記アで判示したところが妥当する。
 もっとも,人員削減の必要性が認められる場面においては,無期労働契約を締結している労働者と,定年後に再雇用されて有期労働契約を締結している労働者のうち,有期労働契約を締結している労働者を優先的に契約更新しない取扱い(雇止め)をすることは合理性を有するものと考えられる。そして,原告X6ら2名は,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4とは異なり,既に満65歳に達したことから被告を定年退職し,退職金の支払を受けた後,被告との間で1年の有期労働契約を締結し,原告X6については2回,原告X7については1回,契約の更新をしてきた者であり,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X4と比べ,更新拒絶(雇止め)による経済的打撃や雇用継続への期待は大きいとはいい難いと考えられる。
 これらの諸点をも併せ考慮すると,原告X6ら2名に対する本件雇止めは,労契法19条柱書所定の客観的に合理的な理由があり,社会通念上も相当であるというべきである。
 したがって,原告X6ら2名に対する本件雇止めは有効である。

主要事業を廃止することに起因する整理解雇を有効とした事例(東京高裁平成30年10月10日判決)

本件は,要旨,油井管製造事業をほぼ唯一の事業とする会社が,売上高の大半を占める取引先から取引終了を通知されたことを契機に,最終的に同事業を廃止することを決定し,これに伴い同事業に従事していた労働者を整理解雇(リストラ)した事案です。一審では,整理解雇(リストラ)を有効と判断し,労働者側が控訴しました。控訴審は,以下の通りの判断枠組みを示し,結論として整理解雇(リストラ)は有効という一審の判決を維持しました。

「控訴人らは,前記第2の3(1)のとおり(※「原判決が本件解雇を基本的に整理解雇とした点は妥当であるが,整理解雇が有効であるための4要件は,本来厳格な要素で考慮しなければならないところ,本件の特殊性(①被控訴人が約118億円もの余剰資産を有している上,年間2億円以上の継続的な賃料収入があること,②単なる製造部門の廃止であって,被控訴人には清算の予定がないこと,③控訴人らの従事していた業務は特殊であり,その技能や経験を生かすことのできる分野はほとんどないため,再就職が非常に困難であること)を考慮した上で,厳格な要件の当てはめをすべきである」)主張する。

 しかしながら,原判決は,本件解雇の効力の判断枠組みについて,人員削減の必要性,解雇回避努力,被解雇者選定の合理性及び解雇手続の相当性の存否及びその程度を総合考慮して労働契約法16条所定の場合に当たるか否かを判断するのが相当であると説示しているのであって,上記の点を重要な考慮要素を類型化したものであると考える立場(厳格な意味での要件であると考える立場(いわゆる4要件説)とは異なる。)を採ったものと解されるところ,当裁判所もそのような判断枠組みを相当と思料する。そして,控訴人らが主張する本件の特殊性については,①は,「会社に膨大な資産があり,継続的な収入がある以上,赤字が見込まれる事業であっても維持し続けなければならない」ということであれば,会社の経営の自由を侵害するものであるから不当であるし,②は,清算の予定がなければ整理解雇が認められないことにはならないというべきである。また,③についても,再就職が非常に困難であるとしても,そのことを理由に他の要素いかんにかかわらず雇用を維持し続けなければならないというものでもないから,いずれもそれを殊更特別なものとして考慮すべきであるとまではいえない。」

担当業務の喪失を理由とする整理解雇が有効とされた事例(東京地裁平成30年10月31日判決)

本件は,要旨,

・原告は,外資系製薬会社の日本法人(被告)で医療情報担当者(いわゆるMR)として勤務していた労働者

・被告の米国親会社と他社(X3社)との業務提携により,被告のジェネリック医薬品にかかる営業部門がX3社に承継され,営業担当である原告を含むMR職はX3社に出向

・その後,当該出向が解除(しかし業務提携は維持)され,原告らは被告に復帰したものの,被告においてMR業務が喪失したことから,被告が原告を解雇

という事案であり,解雇(リストラ)の有効性が争点となりました。

裁判所は,以下のとおり述べ,結論として,本件の解雇を有効と判断しました。

1 解雇の有効性に関する判断枠組み

「本件解雇は,被告が,本件各MRが就くべき業務がないにもかかわらず本件各MRが出向先から大量帰任したことを理由として,経営上必要とされる人員削減のために行ったものであり(略),原告に何らかの帰責事由があることを理由としてされたものではない(略)。この意味で一般にいわゆる整理解雇に当たるということができる。このような本件解雇の性格に鑑みると,本件解雇が有効か否かを判断するに当たっては,①人員削減の必要性,②解雇回避努力,③被解雇者の選定の妥当性,④手続の相当性に関する具体的事情を総合的に考慮した上で,本件解雇が「事業の縮小その他会社の都合により止むを得ない事情にあるとき」(就業規則26条1項5号)に該当し,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認められるか否か(労働契約法16条)を判断するのが相当である。」

2 人員削減の必要性

「①本件業務提携(ジェネリック医薬品の商業化事業承継)によって被告のジェネリック医療品に係る営業部門は全てX3に移管され,それ以降,被告の同部門に係る業務は消滅したこと(略),②本件解除合意(※出向の解除のこと)成立時においても本件業務提携は維持されたため,同営業部門は依然としてX3に残り,他方で,被告においてわずかにMR数名が所属していた特販部も廃止が予定されており,その他にMRが就くべき業務は被告内部には見当たらないこと(略)からすれば,出向の解消時において被告においてはMRの就くべき業務が消滅していたといえる。しかるに,出向の解消に伴って,被告は,その従業員全体の約4割以上相当の173名にも及ぶ本件各MRの大規模な帰任を一時に受け入れざるを得ないことになった(略)。以上に加えて,本件全証拠に照らしても被告においてMRの資格やキャリアを活かすことが可能な役職は見当たらないことも合わせ考慮すれば,被告が,本件各MRに対し,その保有する資格(略)やキャリアに見合った役職や業務を提供することはおよそ困難であり,これらの余剰人員を削減する合理的必要性があったということができる。原告は,本件解雇当時,原告を除く本件各MR全員が合意退職しているところ,原告一名をあえて解雇すべき必要性に乏しい旨主張するが,上記人員削減の必要は,被告の財務状況の悪化によるものではなく(略)MRである原告の就くべき業務が被告内部に存在しないことによるものであるから,被解雇者の人数の多寡によって人員削減の必要性の有無は左右されないというべきである。

(中略)

もっとも,上記のとおり,本件解雇が被告の財務状況の悪化によるものではなく(略)経営政策上の必要性によるものであることに鑑みると,本件解雇につき客観的に合理的な理由があるというためには,それ相応の解雇回避努力(略)が尽くされる必要があるというべきである。」

3 解雇回避努力

「ア 他の職種への配転可能性

①原告は,大学卒業後,他の製薬会社において一貫して医薬品の営業職として勤務したところ,その職歴等を評価されて被告に医薬品の営業職として中途採用されて(略)同採用の約半年後に医薬品の営業に特化した専門性の高い技能を有するMR資格を取得し,それ以降10年以上にわたって一貫してMRの業務に従事し続けており,他方で,就職してから医薬品の営業職以外の他職経験は全くないこと(略),②被告においては社員公募制が採用されており,異なる部門間の配転は基本的には予定されていないこと(略),③被告において給与(役割給)はその役割責任に応じた等級により定められる職務等級制が採用されているところ(略),この職務等級制の下における月額賃金は,原告(MR資格あり)は約50万円(略),他方で,入社時の原告(MRの資格なし)は約30万円(略),特別な資格,知識又は類似業務における職歴が必須でない役職の従業員は約23万円前後(略)であり,MRの資格保有の有無によってその賃金条件につき顕著な差が生じていること,④(略)被告において,原告の保有するMRの資格やキャリアに見合った役職や業務は見当たらないことを総合的に考慮すれば,原告に対する他職種への配転は極めて困難であったといわざるを得ない。そうすると,他職種への配転の措置を講じなかったとしても,その一事をもって直ちに解雇回避努力が尽くされていないと判断することは相当ではない。

イ 被告が講じた解雇回避措置

(ア)X2への出向先確保

被告は,本件解除合意によって人員削減の必要が生じた後に,X2に対して働きかけて本件各MRの38名の出向先を確保している(略)ところ,かかる事情は被告が一定の解雇回避措置を講じたものとして評価することができる。

(中略)

(イ)社内公募の案内

被告は,原告に対し,文書ないし個別面談により現在社内公募されているポジションの案内,説明等をしている(略)。このような被告の行為は,被告では従業員の採用につき社内公募制が採用されていて(略)異なる部署に及ぶ原告の配転が困難であること(略)を踏まえながらも,原告が被告に在籍し続けることを可能な限り支援するものとみることができる。そうすると,被告は,原告に対して解雇回避措置を行ったということができる。

(中略)

(ウ)配転や出向の検討

被告は,原告の配転につき,大きな制約がありながらも(略),工場勤務の出向案を打診したり(略),原告の提示した経験や資格に適する役職について一応検討したり(略)するなどして,同社にとどまりたい旨主張する原告の意向を汲んで,可能な限り配慮したということができ,これらも解雇回避措置としてみることができる。

(中略)

ウ 解雇回避措置に対する原告の対応

(中略)

原告は,被告からの解雇回避措置も含めたその処遇に関する協議の申入れについて取り合わなかったというほかはない(略)。

エ 小括

以上からすれば,被告は,全従業員数の4割を超える大規模な余剰人員が生じたという非常事態下(略)において,その人事制度の仕組みや配転が困難であるという制約の枠内(前記ア)で,なし得る限りの有意な解雇回避措置を複数採っている(前記イ)ということができる。それにもかかわらず,原告は,解雇回避措置を真摯に検討しなかったばかりか,被告からの協議の申入れについて取り合わなかったのであって,原告の協力が得られない以上,被告が上記各措置以上の解雇回避措置を採ることも困難であるから,(略)人員削減の必要性が経営政策上の必要性にとどまることを踏まえても,被告は,相応の解雇回避措置を講じ,解雇回避努力を尽くしたとみることができる。

4 被解雇者の選定の妥当性

被告は,出向の解消当時,MRの就くべき業務が既に消滅しており,MRに対し,その保有する資格やキャリアに見合った役職や業務を提供することはおよそ困難であったから,余剰人員となってしまった本件各MRとの間の雇用契約を解消する必要性がある。そうすると,本件各MRのうちX2への出向対象者を除いた全員(原告もこれに含まれる。略)を一律に雇用契約解消の対象とすることは,上記人員削減の必要性が生じた経緯に照らして合理性を首肯できるし,原告の他部署への配転が困難であった(略)という観点からしてもその合理性は裏付けられる。また,原告は,その直近3年間の成績評価が本件選定基準に達しなかったため,X2への出向者の選定から除外されているが,(略)X2への出向を実現し,一人でも多く解雇を回避するためには,同社が求める優秀な人材を選抜することが必要であったのであるから,その直近3年間の成績を基礎とした本件選定基準を設定することもまたその合理性を肯認することができる。

5 手続の相当性

(中略)

被告は,本件解雇に先立って,全体ミーティング,電子メール,書面による連絡を通じて,本件業務提携契約の内容,本件解除合意に至った経緯,判断過程の要旨,MR業務の消滅,本件解除合意の内容,X2への出向に関する本件選定基準や選定の判断過程,退職パッケージの内容,社内公募の案内等について,自らの領知し得る情報について可能な範囲で繰り返し説明した(略)うえで,今後の原告の処遇について相談にも乗っており(略)更なる協議も試みている(略)のであって,十分な説明や協議を尽くしているとみることができる。」

更生会社における整理解雇が有効とされた事例(大阪高裁平成28年3月24日判決)

本件は、日本有数の航空会社において、会社更生手続中に、被控訴人を含む客室乗務員84名に対する整理解雇を行ったことについて、その有効性が争われた事案です。第一審は、整理解雇は無効と判断していましたが、本判決は第一審の判断を覆し、整理解雇は有効と判断しました。

まず、整理解雇の判断基準としては、本判決は「①人員削減の必要性、②解雇回避措置の相当性、③人選の合理性(人選基準の合理性)、④解雇手続の相当性をそれぞれ検討し、これらを総合的に考慮して判断するのが相当である」として、通常の裁判例と同様の基準を示しました。

そして、本件で特に争点となったもののうち、②解雇回避措置の相当性については「①控訴人が、その事業再生をするためには、事業の大幅な縮小、及びその縮小した事業規模に見合った人員体制とするため多数に上る余剰人員の削減を行うことが必要不可欠であったこと、②控訴人は、平成22年9月末までに本件削減目標606名分(稼働ベース)を内容とする人員削減計画を策定するのに先立ち、同年3月ないし4月にかけて特別早期退職措置の募集を行ったこと、③上記人員削減計画策定の直前である同年9月3日から、繰り返し希望退職措置(第一次・第二次希望退職措置、最終希望退職措置(延長・再延長を含む。)及び本件解雇予告通知後の希望退職措置)の募集を行ったこと、④特別早期退職措置及び希望退職措置を実施するに当たっては、再就職支援サービスの提供等の退職条件を設けることにより、希望退職措置等による退職を促す措置をとったこと、⑤上記②の特別早期退職措置の募集の結果、1367名(在籍社員数)の客室乗務員が応募して控訴人を退職し、上記③の希望退職措置の募集の結果、合計787名の客室乗務員(稼働ベースで544.5名分)が希望退職措置に応じて退職したこと(転籍者1名(稼働ベースで0名分)を含む。)、⑥特別早期退職措置及び希望退職措置により退職等した客室乗務員の人数(頭数)は2154名(1367名+787名)であるから、それは、上記人数と本件整理解雇の対象人数(頭数で84名)を合計した人数(人員削減総数)である2238名(1367名+787名+84名)に対する関係でみると、上記人員削減総数の約96%(2154名÷2238名)に当たることが認められ、これらによれば、控訴人は、必要とされた上記①の余剰人員の削減の大部分を、特別早期退職措置及び希望退職措置の募集によって実現したものといえる」として、解雇回避努力義務は果たされていたと判断しました。

また、③人選基準の合理性について、本件では主として(1)病欠・休職等基準(一定時点で休職中の者、過去に一定期間以上の休職・病欠がある者を整理解雇の対象者とする)(2)復帰日基準((1)に該当しても、一定日に復帰している者については、条件を満たせば整理解雇の対象外とする)(3)年齢基準(高齢の者を整理解雇の対象者とする)が問題となりました。

この点、(1)については、整理解雇の人選において、過去における企業への貢献度を考慮することによって将来の貢献度を判断することは合理的であるという考え方のもと「使用者と労働者間の労働契約において、労働契約の本旨に従った労務の提供をすることが労働者の基本的な義務であること、そのような労務の提供をすることが、貢献があったと評価するための前提として必要であると考えられることからすれば、過去の貢献度を評価するに当たって、「過去の一定期間において病気欠勤や休職により相当日数労務の提供ができない欠務期間があった」との事実の有無を重視することは、合理性を有するというべきである。そうすると、過去の一定期間に病気欠勤や休職により相当日数労務の提供ができない欠務期間があった者は、そのような病気欠勤や休職をしないで勤務を行ってきた者との対比において、控訴人に対する過去の貢献度が低いないし劣後すると評価することは、合理的である」として、基準の合理性を肯定しました。

また、(2)については、「控訴人が、団体交渉における譲歩として(中略)復帰日基準を設けるに当たっては、病欠・休職等基準と、その例外としての復帰日基準の設定は、異なる価値基準をどの範囲で採用するかの問題であるから、復帰日基準の適用範囲をどの限度で設定するかにつき、裁量の余地が認められるというべきである。そして、この見地に照らせば、本件復帰日基準が基準日を9月27日として復帰日基準の適用範囲を相当程度限定したことについても、上記裁量を逸脱・濫用するものでない限り、合理的裁量の範囲内のものと解すべきである」として、本件において裁量権の範囲内で適法であると結論付けました。

(3)については「年齢基準を設けた趣旨は、希望退職措置募集における対象者の年齢制限と同様であり、①控訴人は、経営破綻し更生手続開始決定を受けた更生会社であり、事業再生のためには競争力を高める必要があること、②控訴人においては、同業他社(丁社)に比べ、20歳代30歳代の客室乗務員の割合が低く、平均年齢が相当高いという状況にあったところ、上記年齢構成を引き下げることにより競争力を付けることができること、③将来的に管理職を含む指導者を輩出する層としての若年層を確保する必要があること、④控訴人においては、全体的には年功序列的な賃金体系であったことから、高年齢層ほど賃金水準が高くなるけいこうにあったことに基づくものと認められ、これらは、競争力を付ける見地及び人件費削減効果を高める見地等から、合理的である」として、やはり適法と結論付けました。

その他の整理解雇の要件についても満たしていると判断し、結論として、整理解雇は有効と判断しました。

※一言コメント

本件では、整理解雇の要件(要素)のうち、人選の合理性(人選基準)の点について、第一審と控訴審の判断が分かれたことが結論の差につながっています。この点は担当裁判官による評価の問題であり、結論の予測がしがたい部分でもありますが、同種の事例を検討するうえで参考になるケースだと思います。

整理解雇(及び残業代不払い)が不法行為に当たると判断された事例(東京地裁平成27年2月27日判決)

本件は、労働者が、勤務先の代表取締役らを被告として、自身の解雇が違法であり、且つ、残業代も支払われていないこと等を理由として、損害賠償を請求した事案です。本件では、解雇及び残業代不払いの違法性(ひいては、これが不法行為(=故意又は過失によって他人の権利・利益を侵害して損害を与える行為)にあたるのか)という点が問題となりました。

この点、裁判所は、整理解雇(リストラ)の違法性について「人員削減の必要性があったことは否定できない」としながらも、

・労働者の勤務態度に問題があったことの裏付け証拠がないこと

・労働者に問題があれば試用期間後に本採用をしないという選択肢もあったのにこれを行わなかったこと

・(解雇回避義務としての転籍措置について)解雇を回避するという側面もあったものの、被告らが原告に転籍に向けた準備等をさせ、これを支援するなどした事実が認められないこと

・解雇にあたり、労働者の解雇手続について法律家の助言を経ず、法的知識が不十分なままこれを行ったこと

等を挙げ、「本件解雇は、社会通念上相当であるとは認められず、著しい解雇権の乱用に当たるものというべきであり、労働契約法16条に違反するだけでなく、民法709条の不法行為を構成するものと認められる」と判断し、整理解雇(リストラ)が無効としただけでなく、このような違法な解雇それ自体が不法行為に当たるとしました。

(なお、未払残業代請求についても、被告が労働者の時間外労働を認識しつつも時間外手当を支払っていなかった点を指摘し、同じく不法行為に当たるとしました。)

なお、解雇が無効だった場合の賃金請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権の関係については「請求権競合(高井注:請求権が両方とも成り立つが、一方の請求権に基づいて支払を受けた場合、他方の請求権での支払は受けられない(要するに、二重取りはできない)関係を言います。)の関係に立つから、後者の存在によって、前者の請求が妨げられるものではない」と判断しました。

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