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懲戒処分に関する裁判例

懲戒処分に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

女性に対する追跡行為を理由とした諭旨解雇処分が無効と判断された事例(PwCあらた有限責任監査法人事件、東京地裁令和2年7月2日判決)

ここでは、2か月ほどの間、複数回にわたり、「被害女性の帰宅時に、被告の事務所が入居しているビルの外から最寄り駅のホームまで後をつけ、同じ電車に乗り込み追跡するといった行為」(判決において「本件ストーカー行為」と言われています)を行った労働者に対する懲戒処分としての諭旨解雇処分の有効性が問題となった点を取り上げます。裁判所は以下のとおり述べ、諭旨解雇の懲戒処分は無効と判断しました。

ア 上記(1)の認定事実によると,原告は,被害女性に興味を抱き,平成29年9月頃から同年11月までの間,複数回にわたり,被害女性の帰宅時に後をつけ,同じ電車に乗り込み追跡するといった本件ストーカー行為に及んだことが認められるところ,本件ストーカー行為が,被害女性の意に反するハラスメント行為に該当することは明らかである。そして,被害女性が警察に相談した後,被告が警察に協力し,原告や被害女性に対する事情聴取が行われたことや,本件警告後も,被告が警察からの数回に及ぶ照会に対応していることなどに鑑みると,本件ストーカー行為は,被告の就業規則123条20号において諭旨免職又は懲戒解雇の事由として定められている「ハラスメントにあたる言動により,法人秩序を乱し,またはそのおそれがあったとき」に該当するといえる。
 なお,被告は,原告による本件ストーカー行為は,少なくとも4回に及び,そのうち1回は,原告が被害女性と同じ駅で電車を降りて被害女性を尾行した旨主張する。しかしながら,原告は,本件ストーカー行為を行った回数について,複数回又は2,3回くらいであり,4回はないと思うと供述し,被害女性と同じ駅で電車を降りたことを否定する旨の供述をしている。また,原告は,警察から,原告が被害女性の後をつけている写真を見せられたことを認める供述はしているものの,撮影された場所は明らかではない(原告本人・43頁から44頁まで)。他に被告の上記主張を裏付ける的確な証拠がないことを考慮すると,被告の上記主張は採用することができない。
 また,被告は,本件ストーカー行為のほかに,原告が,職場内において,被害女性の近くの席に座るようになり,被害女性に対して度々視線を送るなどの行為を行った旨主張する。しかしながら,原告は当該行為を行ったことを否定する旨の供述をしており,被告の主張を認めるに足りる十分な証拠がないことから,この点に関する被告の主張は採用することができない。
イ 次に,本件諭旨免職処分は,社会通念上相当であると認められない場合に当たるかについて検討する。
 上記(1)ウの認定事実によれば,原告は,被告から事情聴取を受けた際に,反省の弁を述べる一方で,被害女性が,入院したり,PTSDになったりはしておらず,普通に出勤しているのであるから問題はないのではないかなどといった被害女性への配慮を欠く発言をしていることからすると,原告が,本件ストーカー行為が被害女性に与えた精神的苦痛を十分に理解し,本件ストーカー行為を行ったことについて真に反省していたかは疑わしく,被告において,原告には本件ストーカー行為を行ったことについて反省の態度が感じられないと判断したこと自体に問題があったとはいえない。
 しかしながら,原告には,本件警告を受けた後も被害女性に対するストーカー行為を継続していたといった事情や,他の女性職員に対してストーカー行為に及ぶ具体的危険性があったといった事情までは認められない。また,原告には,本件ストーカー行為が発覚するまでに懲戒処分歴はなく,管理職の地位にある者でもない。これらの事情を総合考慮すると,原告が本件ストーカー行為を行ったことについて真に反省していたかが疑わしい点を勘案したとしても,労働者たる地位の喪失につながる本件諭旨免職処分は,重きに失するものであったといわざるを得ない。そうすると,本件諭旨免職処分は,社会通念上相当であるとは認められない場合に当たる。
ウ 以上によれば,本件諭旨免職処分は,労働契約法15条により,その権利を濫用したものとして無効である。

パワハラを理由とする訓戒の懲戒処分が有効と判断された事例(辻・本郷税理士法人事件,東京地裁令和元年11月7日判決)

本件は,原告労働者の部下(外国籍)に対するパワハラ言動を理由として,訓戒の懲戒処分がなされたことについて,原告が懲戒処分の無効等を主張した事案です。裁判では,部下Cが原告の指示を受けて業務を行った際,原告が「そんな指示はしていない」と叱責し「あなた何歳のときに日本に来たんだっけ?日本語分かってる?」と発言したことについて,「本件発言は,その発言内容そのものが相手を著しく侮辱する内容であり,また,Cが日本国籍を有しない者であることからしても,同人に強い精神的な苦痛を与えるものというべきである。そうすると,上記発言は,原告が部下であるCに対し,職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて精神的,身体的苦痛を与えたものとして,被告の就業規則79条18号所定のパワーハラスメントに当たるというべきである。」として,パワハラとしての評価がされました。

なお,本件で,原告は「本件懲戒処分を受けるに当たり,B弁護士(※会社の顧問弁護士)から事実関係のヒアリングを受けたにすぎず,懲戒権者である被告に対する釈明又は弁明の機会が与えられていないことから,被告の就業規則において必要とされる手続が履践されていない」と主張していました。

この点,裁判所は以下のとおり述べ,手続の点は懲戒処分の有効性に影響を与えない旨判示しました。

『被告の就業規則においては,「懲戒を行う場合は,事前に本人の釈明,又は弁明の機会を与えるものとする」との規定があるのみであり,釈明の機会を付与する方法については何ら定められていない。そして,本件懲戒処分に先立ち行われた本件調査は,法的判断に関する専門的知見を有し,中立的な立場にあるB弁護士が,被告から依頼を受けて行ったものであるから,釈明の機会の付与の方法として適切な方法がとられたということができ,被告の就業規則において必要とされる手続が履践されたというべきである。したがって,原告の主張は採用することができない。

 なお,本件調査の対象は懲戒事由であるパワーハラスメントの有無に関するものであり,懲戒処分の相当性についての意見聴取を含むものではないが,本件訴訟において原告は,本件懲戒処分の手続の瑕疵の点を除けば,専ら懲戒事由の存否を争っているのであり,また,訓戒の処分が被告の懲戒処分の中では最も軽いものであることなどからすれば,懲戒処分の相当性についての意見聴取がされていないからといって,被告の就業規則において必要とされる手続が履践されていないということはできない。』

懲戒処分(けん責)の無効確認請求訴訟において,確認の利益が否定された事例(WOWOW事件,東京地裁平成30年12月26日判決)

本件は,けん責の懲戒処分を受けた労働者が,当該懲戒処分は懲戒権の濫用にあたり無効であると主張し,懲戒処分の無効確認及び損害賠償請求を行った事案です。

裁判所は,以下のとおり述べ,懲戒処分の無効確認を求めること自体を認めませんでした(損害賠償請求についても,懲戒処分は社会通念上相当として,労働者の請求を認めませんでした。)。

「1 本件懲戒処分の無効確認に係る訴えの適法性
  (1) 本件訴えのうち本件懲戒処分の無効確認を求める部分は過去の法律関係の確認を求めるものであるところ,確認訴訟における確認の対象となる法律関係は,原則として現在における法律関係であって,過去の法律関係の確認については,現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合に限って確認の利益が認められると解するのが相当である。
    本件において,原告は,本件懲戒処分が無効かつ違法なものであることを前提に,不法行為に基づく損害賠償請求として,被告に慰謝料等の支払を求める請求をしているところ,当該給付請求をしている以上,過去の法律関係の確認をすることが本件紛争の抜本的解決のために最も適切かつ必要と認めることはできない。
  (2) これに対し,原告は,本件懲戒処分により①原告が今後本件就業規則62条1項9号の適用対象者となってしまうこと,②被告におけるセカンドキャリア支援制度の利用に支障が出るなどの具体的な不利益を被ることから,本件懲戒処分の無効確認の利益があると主張する。
    しかし,①については,同号は,「前条で定める処分(厳重注意,けん責,減給及び出勤停止)を再三にわたって受け,なお改善の見込みがないとき」に懲戒解雇に処すると定めているにすぎず,1回けん責処分を受けたことで当該要件が当然に充足されるわけではないから,現時点において原告に具体的な不利益が生じていると認めることはできない。また,被告のセカンドキャリア支援規程(甲20)によれば,セカンドキャリア支援制度を適用する対象者となるための1要件として,「在職中誠実に勤務し,当社の発展に貢献した者」(3条5号)と定められているところ,1回のけん責処分で当該要件を充足しなくなるとは文言上読み取れない上,過去にけん責処分を受けても当該制度を利用した従業員が複数存在すること(乙158)からすれば,上記②についても,本件懲戒処分により具体的な不利益が生じると認めることはできない。
  (3) したがって,本件訴えのうち本件懲戒処分の無効確認を求める部分は,確認の利益を欠くものとして不適法である。」

地方公務員のセクハラ行為を理由とする停職処分が有効と判断された事例(A市事件,最高裁第3小法廷平成30年11月6日判決)

本件は,地方公務員であった者が,勤務時間中に作業着で訪れたコンビニにおいてわいせつな行為(行為1「勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった」行為2「以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた」。なお,本件懲戒処分の直接の対象は行為1であり,行為2は行為1の悪質性を裏付ける事情,という整理がされている。)を行ったとして停職6か月の懲戒処分を受けたことに対し,その有効性が問題となった事案です。

第一審及び控訴審は,処分が重すぎるとしてこれを無効としていましたが,最高裁は,以下のとおり述べ,懲戒処分を有効と判断しました。

「公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をするか否か,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるものと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁平成23年(行ツ)第263号,同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁等参照。)

 原審は,①本件従業員(※被害者)が被上告人(※懲戒処分を受けた者)と顔見知りであり,被上告人から手や腕を絡められるという身体的接触について渋々ながらも同意していたこと,②本件従業員及び本件店舗のオーナーが被上告人の処罰を望まず,そのためもあって被上告人が警察の捜査の対象にもされていないこと,③被上告人が常習として行為1と同様の行為をしていたとまでは認められないこと,④行為1が社会に与えた影響が大きいとはいえないこと等を,本件処分が社会通念上著しく妥当を欠くことを基礎づける事情として考慮している。

 しかし,上記①については,被上告人と本件従業員はコンビニエンスストアの客と店員の関係に過ぎないから,本件従業員が終始笑顔で行動し,被上告人による身体的接触に抵抗を示さなかったとしても,それは,客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり,身体的接触についての同意があったとして,これを被上告人に有利に評価することは相当でない。上記②については,本件従業員及び本件店舗のオーナーが被上告人の処罰を望まないとしても,それは,事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される。さらに,上記③については,行為1のように身体的接触を伴うかどうかはともかく,被上告人が以前から本件店舗の従業員らを不快に思わせる不適切な言動をしており(行為2),これを理由の一つとして退職した女性従業員もいたことは,本件処分の量定を決定するに当たり軽視することができない事情というべきである。そして,上記④についても,行為1が勤務時間中に制服を着用してされたものである上,複数の新聞で報道され,上告人において記者会見も行われたことからすると,行為1により,上告人の公務一般に対する住民の信頼が大きく損なわれたというべきであり,社会に与えた影響は決して小さいものということはできない。

 そして,市長は,本件指針が掲げる諸般の事情を総合的に考慮して,停職6月とする本件処分を選択する判断をしたものと解されるところ,本件処分は,懲戒処分の種類としては停職で,最も重い免職に次ぐものであり,停職の期間が本件条例において上限とされる6月であって,被上告人が過去に懲戒処分を受けたことがないこと等からすれば,相当に重い処分であることは否定できない。しかし,行為1が,客と店員の関係にあって拒絶が困難であることに乗じて行われた厳しく非難されるべき行為であって,上告人の公務一般に対する住民の信頼を大きく損なうものであり,また,被上告人が以前から同じ店舗で不適切な言動(行為2)を行っていたなどの事情に照らせば,本件処分が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものであるとまではいえず,市長の上記判断が,懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。」

懲戒処分の事実を法人内で公表したことが名誉棄損に当たらないとされた事例(国立大学法人Y大学事件,東京地裁平成30年9月10日判決)

本件は,大学医学部のA教授になされた懲戒処分について,学内で「職員の懲戒処分について」と題する記事が学内専用ホームページに掲載されたこと等について,A教授側が,名誉棄損に基づく損害賠償等を請求した事案です(ここでは,名誉棄損の当否以外の点は割愛)。なお,記事の内容は以下のとおりです。

「このたび,本学の教員が,平成28年12月,学外委員を含む本学の重要事項を審議する会議において,自己の主張が受け入れられないことが決定した後に,会議の途中でありながら,正当な理由なく無断で退席しました。また,本会議での審議内容については,重要事項であり非公開で進める旨の取り決めがなされていたにも関わらず,会議メンバーの了承を得ることなく,無断で録音していた審議の内容を電子メールで多数の教職員に送信しました。さらにこの内容を知った学外者を経由し,さらに多数の教職員の知るところとなりました。これらのことを受け,法務・コンプライアンス・地域貢献担当理事を中心に事実確認等を行い,役員会で審議した結果,平成29年9月28日付けで当該職員を懲戒処分として,戒告しました。このようなことが起こってしまったことは誠に遺憾であります。今後,このようなことがないよう,教職員においては今一度,自身の職責や職務への取組み姿勢を振り返るとともに,より一層,職務に専念して下さい。」

裁判所は,本件懲戒処分が有効であることを前提の上,以下のとおり判示し,名誉棄損の成立を認めませんでした。

「懲戒処分の学内周知等要領2条,4条1項によれば,被告においては,大学運営の透明性を確保するとともに,職員の服務に関する自覚を促し,同様の不祥事の再発防止を目的として,原則として全ての職員の懲戒処分について学内周知を行う旨規定されているところ,(略)本件懲戒処分についても上記規程に基づき本件学内周知行為が行われたこと,本件記事には被懲戒者が原告であることを直接特定するような記載がないことが認められる。上記によれば,本件学内周知行為は,原告の社会的評価を低下させるものではなく,原告に対する名誉棄損行為に該当しない。

 仮に本件記事から被懲戒者が原告であると認識することが可能であり,本件学内周知行為により原告の社会的評価が低下するおそれがあるとしても,本件学内周知行為は,被告の医学部教授であり,12月選考会議当時,医学部長,教育研修評議会評議員,学長選考会議委員及び同会議副議長を兼任するなど公的立場にあった原告に対する懲戒処分についてされたものであり,公共の利害に関するものであると認められること,B学長の再選に反対した報復や見せしめなどの不当な動機を伺わせるような事情も認め難く,懲戒処分の学内周知等要領2条,4条1項に基づき,大学運営の透明性を確保するとともに,職員の服務に関する自覚を促し,同様の不祥事の再発防止を目的としてされたものであって,専ら公益を図る目的で行われたものと認められること,(略)本件懲戒処分は適法かつ有効であり,本件記事の内容も真実に基づくものと認めらられることからして,違法性が阻却される。」

セクハラに当たると評価されたLINEを理由とする停職一か月の懲戒処分が無効と判断された事例(X大学事件,東京地裁平成30年8月8日判決)

本件は,大学の准教授であった原告が,女子学生に対するLINEがセクハラに当たるとして大学側から停職1か月の懲戒処分を受けたことにつき,①当該LINEはセクハラに当たらない②仮にセクハラに当たるとしても停職1か月は重過ぎる,として,懲戒処分の無効を主張した事案です。

裁判所は,以下のとおり述べ,原告の女子学生に対するLINEはセクハラに当たるとしましたが,1か月の出勤停止処分は重過ぎるとして,懲戒処分を無効と判断しました。

1 LINEのセクハラ該当性について

「原告の本件LINEにおける一連の言動は,痴漢の話題に始まり,短期大学におけるセクハラの件に触れ,女子学生Aが在籍した短期大学の学長のセクハラに及ぶや,「学長のケースって,やっちゃったの?」とか,セクハラの限界線などとして,「お尻は無理だけど,二の腕はOKとか」などと,性的な内容の話題に言及している。また,その後も,ゼミの学生の選考に関し特定の女子学生を途中で「切る」理由として「かわいくないから」などと述べるなど,女性を容姿で判断する志向を示した上で,女子学生Aに対し,「今度,デートしよっか?」と述べているもので,一般的に女性の立場から見て不愉快を感じさせるに足りる内容であることは明らかであり,実際に,女子学生Aは本件LINEの翌日である4月12日には人権コーディネータに相談し,改めてのゼミ登録ができない状況下でもあえて原告のゼミを続けることはできないとの認識を示していること(略)からすると,女子学生Aは,原告の言動により実際に不快感を抱いたと認められる。以上に照らすと,原告の本件LINEにおける言動は,セクハラ防止規程2条2号の「性的な言動により学生に不快感を与えて,当該学生の就学・研究環境を悪くすること」に当たると認められるから,就業規則61条の2及び84条の懲戒事由に該当するというべきである。」

2 懲戒処分の相当性について

「原告は,本件LINEによるやり取りの早期の段階で,女子学生Aが既読無視をしたことを咎めたとも受け取れる発言をしているところ,原告と女子学生Aが教員とそのゼミ所属希望の学生という特殊な関係にあり,原告の上記発言により女子学生AがLINEによるやり取りを途中で打ち切れないという心情に陥っていることに照らすと,少なくとも,これは不用意な発言であったといえること,原告としては,教員とゼミ所属希望の学生という関係に思いを致し,女子学生Aが原告からのLINEを打ち切れないという心情にあることをも考慮に入れて,原告の方から会話を打ち切るべきであったといえるところ,原告は,延々と約3時間にわたってLINEを続けているもので,原告の態度は軽率の誹りを免れないこと,女性を容姿で選別するかのような教員としての品位を疑わせる発言も認められること,(中略)本件LINEによる一連の発言により,実際に女子学生Aに強い不快感を抱かせていることなどに照らすと,かかる言動に対する原告の責任については,これを軽視することはできないというべきである。

 しかしながら,他方で,本件LINEの経過を子細に見ると,原告は,女子学生Aからの研究ノートという講義についての質問を受けて,丁寧にこれに答えており,その後,女子学生Aに対し,眠かったら無理せず言ってほしい旨申し向けていることなども併せて考えると,前記の既読無視の指摘やゼミの単位に関する発言については,女子学生AにLINEを打ち切らせないための意図的な行動であったとは認め難い。また,本件LINEについては全体的に軽佻な冗談を交えた雰囲気のものであり,デートに誘う発言についても,女子学生Aに断られてそれ以上の言動に出ているわけでもなく,断られることを前提とした冗談であるとみるのが自然であって,少なくとも,教員とゼミへの所属を希望する学生という上下関係を利用して,デートすることを目論んだものとは認め難い。原告の対応が軽率であったことは否定できないものの,女子学生Aの返答ぶりも全体としてかなりフランクなものであり,原告の一連の言動に対し明確な拒絶をしなかったことに照らすと,原告が女子学生Aが困惑していないと誤信し,調子づいて一連の発言をしたことを過剰に非難するのは相当ではない。さらに,(中略)原告には懲戒処分歴がないことや,懲戒処分における事情聴取ないし弁明手続の中で,本件LINEにみられるような学生とのコミュニケーションの取り方を反省し,今後同様の行為を繰り返さないという趣旨を述べていることからも(書証略),一定限度で原告に有利に斟酌すべき事情であるといえる(なお,被告は,この点に関し,同手続における原告の一部の言動を捉えて,原告に真摯な反省がみられない旨主張するところ,そのような主張は,大学運営という観点からセクハラの再発を厳に防止すべきという被告の立場に照らし理解できるものではあるが,懲戒処分の量定に当たっての被懲戒者に対する評価としては厳しすぎるといわざるを得ない。)。

 これらの事情に照らすと,被告が,原告に対し,就業規則上懲戒解雇に次ぐ重い懲戒処分として停職を選択したことは重きに失するというべきであって,本件停職処分は(中略)労働契約法15条に基づき,無効であると認められる。」

男女関係を契機とする懲戒処分、配転命令が有効と判断された事例(T社事件、東京地裁平成27年9月9日判決)

本件は、使用者である会社から、元交際相手の男性との復縁工作を探偵社に依頼した行為について3日間出勤停止の懲戒処分等を受けた労働者が、当該懲戒処分の無効を主張した事案です。本件では、懲戒事由の有無、懲戒権の行使が濫用に当たるか等が主要な争点となりました。

この点、裁判所は、懲戒事由の有無については、「原告は、男性を女性に近づけ、別れを演出する等の復縁工作を行う探偵社であることを知りながら、当該探偵社に対し、130万円を支払って、原告の元交際相手であった本件男性の身辺調査及び復縁工作を依頼した(以下「本件依頼行為」という。)。当該探偵社は、本件依頼行為の依頼を遂行するために、(中略)名誉毀損行為(自宅まで撮影された顔写真の公開によるプライバシー侵害も含む。)、被害女性の結婚式・披露宴直前に、その会場に対し、開催すると大変なことが起きる等とのメールを送信する脅迫行為、及び、被告営業所に対する多数回の架電、メール、ホームページへの書き込み等をする業務妨害行為を行った(以下「本件名誉毀損等の行為」という。)。本件名誉毀損等の行為は、本件依頼行為がなければ発生しなかったといえるから、両者の間には条件関係がある。そして、原告としては、探偵社が本件依頼行為の依頼を遂行する手段として本件名誉毀損等の行為を行うことまでは認識、認容していなかったが、工作員の男性を女性に近づけて男女を別れさせる等という詐術を用いた復縁工作を行う探偵社であることは認識しており(中略)、本件依頼行為により、原告の元交際相手である本件男性及びその交際相手である被害女性のプライバシー権を正当な理由なく侵害する行為が行われることはもちろん、被害女性と本件男性を別れさせる目的で、工作員の男性が、被害女性に恋愛感情があるかのように振る舞い、被害女性をその旨錯誤に陥らせるといった詐術を用いて、本件男性と被害女性を別れさせるという社会通念上相当とはいえない行為が行われる危険があることは認識し得たと認められる」と認定し、就業規則の懲戒事由である「職場・・・外において他人の人権をみだりに侵した・・・等の行為」「・・・重大な過失により会社秩序をみだし・・・た」に該当すると判断しました。

また、懲戒権の濫用に当たらないかという点は「本件依頼行為は、本件男性及び被害女性のプライバシーを正当な理由なく侵害する行為で、かつ、社会通念上相当とはいえない行為である。そして、本件依頼行為がなければ起きなかった本件名誉毀損等の行為により、被害女性はインターネット等において実名をもって著しく名誉を毀損され、その結婚式の二次会は中止を余儀なくされ、被告は数日間の業務妨害により多数の従業員による対応を余儀なくされた。つまり、本件依頼行為は、それ自体が権利侵害である上、起きた結果はさらに重大である。そうすると、原告が、本件名誉毀損等の行為が行われることについて認識、認容していなかったこと、原告について初めての非違行為であること、被害女性と示談が成立していること、原告が、交際相手から他の女性との結婚を伝えられ、焦りの余り取った行動であることとを考慮しても、出勤停止3日の懲戒処分を行うことは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、懲戒権の濫用であるとはいえない(労働契約法15条)」とし、懲戒権の濫用にも当たらず、結論として懲戒処分は有効と判断しました。

パワハラを理由とする懲戒処分(降格)が有効とされた事例(M社事件、東京地裁平成27年8月7日判決)

本件は、被告会社で現在も就労する原告が、自身のパワハラ行為を理由に会社から受けた懲戒処分(降格)が無効であると主張し、その無効確認を求めた事案です。争点は多岐にわたり、①確認の利益(裁判において、懲戒処分の無効を確認する必要があるか)②パワハラ行為の存否③懲戒事由該当性④処分の相当性⑤処分の適法性が問題となりました。

この点、①については、「ある基本的な法律関係から生じた法律効果につき現在法律上の紛争が存在し、現在の権利又は法律関係の個別的な確定が必ずしも紛争の抜本的解決をもたらさず、かえって、これらの権利又は法律関係の基本となる法律関係を確定することが、紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合においては、現在の法律関係であるか過去のそれであるかを問わず、確認の利益があるものと認めて、これを許容すべきである」という、裁判所の基本的な考え方を確認したうえ「原告は、本件処分により、既に265万2527円の損害を被り、今後の収入や年金収入にも大きく影響を受けることが認められることから、本件処分の無効確認は、原告被告間の雇用関係上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる」として、確認の利益を肯定しました。

②については、証拠を検討のうえ、原告が、複数の部下に対して、パワハラと評価すべき言動を行っていたことを認定しました。

③については、原告は、懲戒処分を行うには就業規則等でその根拠が定められていることが必要であるところ、(1)会社の懲戒処分には適用条項の誤りがある(2)パワハラについての懲戒処分の根拠規定はなく、パワハラについて懲戒処分を科すには就業規則の変更が必要であったのにその手続きがとられていない、ため、懲戒処分は無効と主張していました。

(1)については「原告は、就業規則第49条14号はいわゆる『セクシャルハラスメント』を前提とした規定であり適用条項を誤っていると主張する。(中略)就業規則の適用も、正確には49条17号、同条14号の適用として理解すべきところ、原告が『セクシャルハラスメント』で懲戒処分を受けたものとは認められない。なお、就業規則49条17号の『前各号に準ずる行為』には、同条14号の文言のうちの『性的な』を除いた『相手の望まない言動により、他人に不快な思いをさせたり、職場環境を悪化させたとき』が該当すると通常考え得るし、『セクシャルハラスメント』と『パワーハラスメント』は『ハラスメント』としての共通性を有する。パワハラについて就業規則49条17号、同条14号を懲戒処分の根拠とすることに特段の問題はない」としました。そのうえで、(2)についても、パワハラが就業規則において懲戒処分の対象とされることの周知もしたうえで本件処分を行っていることをも踏まえ、「就業規則の解釈の範囲内でパワハラを懲戒処分の対象とすることは可能であって、就業規則を変更しなくてもフジ興産事件で求められている各要件(使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要することはもとより、就業規則が法的規範としての性質を有するとして拘束力を生ずるためには、その内容を、適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていることを要するとした最高裁判例)は満たす」と判断しました。

④については、②で認定したパワハラ行為が「一般仲介事業グループ担当役員補佐の地位に基づいて、部下である数多くの管理職、従業員に対して、長期間にわたり継続的に行ったパワハラである。原告は、成果の上がらない従業員らに対して、適切な教育的指導を施すのではなく、単にその結果をもって従業員らの能力等を否定し、それどころか、退職を強要しこれを執拗に迫ったものであって、極めて悪質である」と評価しました。また、「部下である従業員の立場にしてみれば、真面目に頑張っていても営業成績が残せないことはあり得ることであるが、さりとて、それをやむを得ないとか、それでも良しとは通常は考えないはずである。成績を挙げられないことに悩み、苦しんでいるはずである。にもかかわらず、数字が挙がらないことをただ非難するのは無益であるどころか、いたずらに部下に精神的苦痛を与える有害な行為である。部下の悩みを汲み取って適切な気付きを与え、業務改善につなげるのが上司としての本来の役目ではないかと考える。原告自身も営業職として苦労した経験はあるだろうし、それを基に、伸び悩む部下に気づきを与え指導すべきものである。簡単に部下のやる気の問題に責任転嫁できるような話ではない。証拠調べ後の和解の席で、被告から「退職勧奨」を受けたことは当裁判所に顕著な事実であるが、これをもってようやく部下らの精神的苦痛を身をもって知ったというのなら、あまりに遅きに失する」として、かなり踏み込んだ形で原告の行為の悪質性を指摘しました。そして、「被告は、パワハラについての指導啓発を継続して行い、ハラスメントのない職場作りが被告の経営上の指針であることも明確にしていたところ、原告は幹部としての地位、職責を忘れ、かえって、相反する言動を取り続けたものであるから、降格処分を受けることはいわば当然のことであり、本件処分は相当である」と結論付けました。

⑤については、原告は、懲戒処分に際して弁明の機会が付与されなかったため、適正手続違反で処分は無効との主張をしていましたが、裁判所は「実質的な反論・弁明の機会が与えられていなかったとまでは評価できず、違法無効であるとはいえない」として、原告の主張を退けました。

結論として、原告のパワハラ行為を理由とする懲戒処分は有効、と判断しました。

賞罰委員会での審議を経て行われた懲戒解雇が、労動者に弁明の機会を付与していなくても有効とされた事例(ホンダエンジニアリング事件、宇都宮地裁平成27年6月24日判決)

本件は、被告(会社)から懲戒解雇処分を受けた原告(労動者)が、懲戒解雇の事由が認められないこと、弁明の機会の付与等、懲戒処分を行う上で必要な手続が取られていないことを理由に、当該懲戒解雇処分の無効等を主張した事案です。

この点、裁判所は、「原告は、平成25年5月28日から8月1日までの間、上司からの業務命令に従わず、指示された業務にも従事しなかったこと」が会社就業規則に定める懲戒事由「会社の規則、業務命令および業務指示を遵守せず、またはこれに反抗したとき」に該当すること、「平成25年6月12日から8月1日までの36日間、無断欠勤を続けたこと」が上記懲戒事由「無断欠勤14日以上にわたったとき」に該当することを認め、原告には懲戒事由該当性があることを認定しました。

この点、原告は、「被告からの業務命令に従うと、原告が前職退職時に負った秘密保持義務に違反すること」を理由に、業務命令に従わなかったことには正当な理由がある旨主張していましたが、裁判所は「原告は、本件労働審判申立以前に上記誓約書(※秘密保持義務を定めたとされるもの)を被告に提示したことはなく、原告が被告において担当していた業務を行うことによって、上記誓約に反する事態が生じることを窺わせる事実を認めることもできない」として原告の主張を排斥しました(原告は、その他、原告に対するパワハラがあったので懲戒事由が認められない等の主張をしていましたが、いずれも裁判所はこれを否定しました。)。

また、懲戒解雇にあたり弁明の機会を付与しなかった点については、裁判所は「被告の就業規則において弁明の機会を与える旨の規定は置かれておらず、懲戒をするにあたっては、労使の代表者で構成する賞罰委員会の意見を聞くこととされているところ、このような場合、弁明の機会を付与しないことをもって直ちに懲戒手続が違法ということはできない。そして、本件においては、賞罰委員会に諮って本件懲戒解雇がなされているものであるから、手続に違法な点があるということはできない。原告は、賞罰委員会において、原告が訴えていたパワーハラスメントや秘密保持義務違反は話題にされていないのであるから、原告の弁明を聴く機会が保障されたということはできないとも主張するが、(中略)パワーハラスメントや秘密保持義務違反のおそれを認めることはできないから、賞罰委員会がこの点を審理しなかったことをもって、手続に違法な点があるということはできない」として、別途弁明の機会を付与しなくとも、本件においては懲戒解雇が有効と判断しました。

※ひとことコメント

本件は、明示的に弁明の機会を付与してはいませんが、会社側は懲戒解雇に至るまでに何度も原告に説得、警告をするなど実質的には原告の言い分を聴取していたこと、会社の規則上、弁明の機会を付与することが要件化されていなかったこと、等の事実が認定されています。これらが裁判所の判断の上で重要な事情だったと思われますので、本判決の結論のみを一般化するのは難しい(あくまで事例判決である)と思います。

上司名義の印鑑を購入して無断で業務上の書類に押印する行為等を理由とする停職処分の有効性を認めた事例(陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地事件・東京地裁平成26年9月11日判決)

本件は、防衛省陸上自衛隊1等陸尉である労働者が、所属する霞ヶ浦駐屯地業務隊長から、停職6日の懲戒処分を受けたことについて、同処分が違法であるとして、処分の無効及び慰謝料等の損害賠償請求を行った事案です。

本件懲戒処分は「労働者が上司の名義と同じ名義の印鑑を購入し、業務上の書類に無断で押印した行為等」を理由とするものでしたが、労働者側は「上司が業務上違法な行為を行っており、当該無断押印行為は、これを自分が控えることと引き換えに上司に違法な行為をやめさせるためのものであり、正当な目的に基づくから本件懲戒処分は相当でない」旨の主張をしていました。

これに対し、裁判所は、労働者の無断押印行為、上司からこれを辞めるように指示があったにも関わらず労働者がこれに従わなかったことを認定した上、労働者の無断押印行為により事業上の事務処理に多大な支障が生じたことを容易に推認できるとしました。そして、労働者側の上記主張に対しては、「ある職務執行の適正が阻害されているからといって、別の職務執行が阻害されてよいはずがない」「職務執行の適正化を図る目的があるとしても、その是正は公益通報その他の適法な手段によるべきであって、上記目的が無断押印行為を繰り返して総務課ひいては埼玉地本の職務執行の適正を妨げることを正当化できる論拠となるものではない」とし、労働者の上記主張を認めず、結論として、懲戒事由は認められ、処分の程度も相当であるとして、本件懲戒処分を有効と判断しました。

なお、労働者側は、上司の違法行為(と労働者が考える事由)について所定の公益通報を行っており、①本件懲戒処分が公益通報手続の終了直後になされたこと、②使用者側は早い段階から労働者の無断押印行為を認識していたにもかかわらず、本件懲戒処分が平成24年2月に至るまで行われなかったこと等を捉え「本件懲戒処分は、労働者が公益通報を行ったことを理由とする組織的な不利益取扱いにあたる(高井注:公益通報したことを理由に労働者に不利益を及ぼすことは禁じられています)」という主張もしていました。

この点、裁判所は「本件公益通報によって原告(高井注:労働者のことです。)に不利益取扱いがなされないようフォローアップしつつ、懲戒処分等の手続を進める方法もあり得たと思われるので、本件処分が行為時から時間的に相当経過した後に行われたことが最善の対応といえるかは疑問があるが、(裁判所が認定した事実関係によれば)本件処分の意図が本件公益通報をした原告への報復ないしは不利益な取扱いとして行われたとは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない」ないとして、本件処分の有効性には影響を与えないと判断しました。

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