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競業避止義務に関する裁判例

競業避止義務に関する裁判例

競業避止義務に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

競業避止義務を定めた誓約書の効力が一部否定された事例(東京地裁平成31年3月25日判決)

本件は「退職後1年間は,会社の事前許可がない限り,一都三県において会社と競業関係にある他社への就職等を禁止する」という内容の競業避止義務を定める誓約書(労働者が署名押印したもの)の有効性が問題となった事案です(その他の争点は割愛)。

労働者側は,誓約書への同意が錯誤や脅迫により無効という主張もしていましたが,裁判所はこれを排斥し,労働者の署名押印は真意に基づくものとしました。しかし,以下のとおり述べ,誓約書のうち,競業避止義務を定める部分(誓約書6条)は無効と判示しました。

「本件誓約書6条は,被告Y3に対し,原告退職後1年間,事前の許可なく,一都三県において原告と競業関係にある事業者に就職等をすることを禁止しているところ,かかる制限は被告Y3の職業選択の自由を制限するものである上,原告との間で有期労働契約を締結し,主として登録派遣社員の募集や管理等を行っていたにすぎない被告Y3について,制限の期間や範囲は限定的であるものの,原告の秘密情報の開示・漏洩・利用の禁止や,従業員の引き抜き行為等の禁止をする以上の制限を課すべき具体的必要性が明らかでなく,かかる制限に対する特段の代償措置も設けられていないことなどを考慮すると,本件誓約書6条は公序良俗に反し無効である。」

「同業他社への転職の場合、退職加算金相当額を返還する」旨の合意の有効性が認められた事例(東京地裁平成28年3月31日判決)

本件は、証券会社(原告)に勤務していた労働者(被告)が、同業他社に転職しないこと等を条件に退職金の加算を受けていたところ、被告が原告を退職後に同業他社に就職したことが判明したとして、原告が被告に対し、退職加算金相当額の返還を請求した事案です。

被告が退職時に原告に提出した誓約書には「同業他社に転職し、原告から請求された場合には、退職加算金相当額を原告に返還する旨の約束」(本件返還合意)が記載されていましたが、本件では、本件返還合意の有効性が争点となりました。

具体的に、まず、被告は、転職先(髙木証券)は原告のグループ会社であり、そもそも同業他社に当たらない旨主張していましたが、裁判所は「髙木証券は、原告と同じ野村グループに属するものの、原告とは独立した立場で金融商品取引業を営んでいて、原告と営業上競合するおこともあり、原告の役員経験者(C)から見ても原告と競合関係にあると理解される会社である。しかるところ、本件返還合意は、被告の主張によっても、原告及び原告グループ各社の利益保護を目的にしているというのであり、その目的には原告独自の利益の保護も含まれるのであるから、原告と競合関係にある髙木証券が本件返還合意の「同業他社」に含まれない都会すべき理由はないというべきである」として、被告の主張を排斥しました。

また、被告は、「本件返還合意は被告の退職後の職業選択の自由を制約するので、その有効性は、競業禁止の目的が原告の正当な利益の確保に向けられたものか否か、競業行為の禁止の内容が必要最小限度にとどまり、かつ、十分な代償措置が取られているか否かを考慮して判断すべき」と主張していました。

この主張に対して、裁判所は「本件返還合意は、本件制度に基づく本件退職加算金の支給に伴うものであるところ、本件制度は、従業員が申請し、原告が承認した場合に、通常の退職慰労金に加えて退職加算金を支給するという制度であり、これを利用するか否かは、従業員の自由な判断に委ねられているものと解される。したがって、原告を退職しようとする従業員において、原告との間で将来同業他社に転職した場合に退職加算金を返還する旨の合意(本件返還合意)をすることを望まないのであれば、本件制度を利用しなければよいのである。」「また、本件返還合意は、従業員に対して同業他社に転職しない旨の義務を負わせるものではなく、従業員が同業他社に転職した場合の返還義務を定めるにとどまるものである。したがって、原告を退職しようとする従業員としては、将来同業他社に就職することが確定しているのでない限り、ひとまず本件返還合意をして退職加算金を受け取っておき、将来同業他社に就職する機会が生じたときに退職加算金を返還して就職するか否かを考えることで何ら問題ない」として、「本件制度は、退職加算金の受給に伴って本件返還合意をしなければならないことを考慮しても、原告を退職しようとする従業員にとって通常の退職よりも有利な選択肢であるということができるから、本件制度のうち本件返還合意だけを取り上げて、これが退職後の職業選択の自由を制約する競業禁止の合意であると評価することはできない」として、被告の主張を排斥しました。

結論として、本件返還合意は有効であるとして、当該合意に基づく原告の請求を認めました。

 

転職に関する競業避止義務違反が否定された事例(東京地裁平成27年10月30日判決)

この事件は、会社側が、元従業員であった労働者に対し、両者間の雇用契約上の競業避止義務違反又は不法行為に基づき損害賠償として金180万円を請求したという事件です。

会社側は、

①労働者と転職先らとの間で引き抜きについての共謀があった

②労働者は、会社側に対して負う競業避止義務に違反した

という主張をしていました。

なお、②に関して、会社側が根拠として挙げた規定の内容は以下のとおりでした。

ア 就業規則第13条

第6項 会社、取引先等の機密を漏らさないこと。具体的には、社則及び社内書類全般、企業に関する全データ、業務に関する全てのデータ等の複製並びに社外への持ち出し及び出版物やWeb等の掲載などによる漏洩等を禁止する。尚、退職した場合も競業避止義務として退職日から起算して3年以内は当社と競業関係に立つ業種に関与することを禁止する。

第7項 許可なくほかの会社の業務等に従事しないこと。

イ 両者間の覚書

第2条 出向業務にかかる出向先及びその他からの引き抜き行為には注意し、次の行為を行わない。

1)出向中知り得た事業者への就職

2)出向中知り得た事業者及び第三者に対して、自らの営業活動をすること、ただし、直接仕事の打診があった場合には、乙(会社)に対して報告し書面による承諾を得て仕事を受注する。

第4条 甲(労働者)が、乙社員として出向した現場関係者より業務の問い合わせ(軽微な質問も含む)を受けた場合は、速やかに乙に報告し、対応についての指示を仰ぐ。それは、乙が出向中の現場関係者及び出向終了後の現場関係者からのものも含む。また、甲が乙を退職した後についても、同様とする。

ウ 労働者の誓約書第6条

第1項 在職中に業務上知り得た客先及び第三者に対して、自らの営業活動をしないこと、又、直接仕事の打診があった場合にはタナカグループに対して報告し、書面による承諾を得て仕事を受注するものとする。

第2項 前項の規定は、自らが競業業者を含むその他の会社に雇用された場合には、その会社内での活動に準用する。

第3項 前2項の規定に反して仕事を受注した場合には、タナカグループに対して、契約金額を損害賠償額として支払う。

 

これに対し、裁判所は、

①については、会社の主張する引き抜き行為の共謀の事実を否定しました。

また、②についても、以下のように述べて、会社の請求を認めませんでした。

「被告は単にハローワークを通じてY社に転職したに過ぎず、Y社及びX社と引き抜き行為に関する共謀はなかったと当裁判所は判断するが、引き抜き行為の有無にかかわらず、競業関係にある他社への転職は、文言上、本件競業避止規定に該当すると考えられる。」

「被告は、原告に使用者として保護されるべき正当な利益がないにも関わらず、被告の転職及び再就職の自由を不当に制限する本件競業避止規定は、不必要かつ不相当であり、無効であると主張する。一般に、会社の従業員は、元来、職業選択の自由を保障され、退職後は競業皮脂義務を負わないのが原則である。したがって、退職後の転職を禁ずる本件競業避止規定は、その目的、在職中の被告の地位、転職が禁止される範囲、代償措置の有無等に照らし、転職を禁止することに合理性があると認められないときは、公序良俗に反するものとして有効性が否定されるというべきである。」

「確かに、原告の主張する、労働者派遣事業を行うために原告が負担する顧客開拓・維持の費用あるいは業務拡大の期待利益については一応保護に値する利益と考えられるが、1年勤務したに過ぎない被告に対する職業選択の自由の制約として見た場合、前記(中略)のとおり、本件競業避止規定がそれぞれ定める要件は抽象的な内容であって(就業規則第13条「競業関係に立つ業種」、本件覚書「出向中知り得た事業者」、本件誓約書「在職中知り得た客先及び第三者」、「競業業者を含むその他の会社」)、幅広い企業への転職が禁止されることになる。また、禁止される期間も、3年間の競業避止期間(就業規則第13条)は被告の勤続期間1年と比較して非常に長いと考えられるし、本件誓約書及び本件覚書については期間の限定が全く無いことから、いずれも過度の制約を被告に強いているものと評価せざるを得ない。」

「これに対して、被告は、前記(中略)のとおり、休日出勤手当や残業手当の支払がなく、賞与の支給もなかった。また、原告に内定後入社までの研修期間中にも被告は業務に従事しているが、事前に聞かされていたアルバイト料の支払もなかった(証拠略)ことからすれば、被告は、原告から本来受けるべき対価としての賃金を十分に受け取っていないものと認められる。そればかりか、被告が転職活動をするにしても、被告が希望する積算業務の求人が非常に少なく(書証略)、応募が困難な中でようやくY社への転職が決まったという事情もあった。」

「そうすると、本件競業避止規定によって被告の転職を禁止することに合理性があるとは到底認められないことから、公序良俗に反するものとして有効性が否定されるというべきである。そうすると、被告の主張には理由があり、被告の転職に関して競業避止義務違反は生じない。」

※ひと言コメント

競業避止義務の成立は、仮に明示的な合意があっても、限定的に解釈されるべきと考えられています。本判決も、同様の立場から判断を下しており、結論として妥当と思われます。

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