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採用内定に関する最高裁判例

大日本印刷事件(最二小判昭和54.7.20民集33巻5号582頁)

この判決は,採用内定の法的な性格および,内定の取消事由についての判断を示したものです。

1 採用内定の法的性格

「企業が大学の新規卒業者を採用するについて、早期に採用試験を実施して採用を内定する、いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきである。したがつて、具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたつては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある。
 そこで、本件についてみると、原審の適法に確定した事実関係は、おおむね次のとおりである。すなわち、上告人は、綜合印刷を業とする株式会社であるが、昭和四三年六月頃、滋賀大学に対し、翌昭和四四年三月卒業予定者で上告人に入社を希望する者の推せんを依頼し、募集要領、会社の概要、入社後の労働条件を紹介する文書を送付して、右卒業予定者に対して求人の募集をした。被上告人は、昭和四〇年四月滋賀大学経済学部に入学し、昭和四四年三月卒業予定の学生であつたが、大学の推せんを得て上告人の右求人募集に応じ、昭和四三年七月二日に筆記試験及び適格検査を受け、同日身上調書を提出した。被上告人は、右試験に合格し、上告人の指示により同月五日に面接試験及び身体検査を受け、その結果、同月一三日に上告人から文書で採用内定の通知を受けた。右採用内定通知書には、誓約書(以下「本件誓約書」という。)用紙が同封されていたので、被上告人は、右用紙に所要事項を記入し、上告人が指定した同月一八日までに上告人に送付した。本件誓約書の内容は、
 「この度御選考の結果、採用内定の御通知を受けましたことについては左記事項を確認の上誓約いたします
             記
 一、本年三月学校卒業の上は間違いなく入社致し自己の都合による取消しはいたしません
 二、左の場合は採用内定を取消されても何等異存ありません
 「1」 履歴書身上書等提出書類の記載事項に事実と相違した点があつたとき
 「2」 過去に於て共産主義運動及び之に類する運動をし、又は関係した事実が判明したとき
 「3」 本年三月学校を卒業出来なかつたとき
 「4」 入社迄に健康状態が選考日より低下し勤務に堪えないと貴社において認められたとき
 「5」 その他の事由によつて入社後の勤務に不適当と認められたとき」
というものであつた。ところで、滋賀大学では、就職について大学が推せんをするときは、二つの企業に制限し、かつ、そのうちいずれか一方に採用が内定したとき、直ちに未内定の他方の企業に対する推せんを取消し、学生にも先に内定した企業に就職するように指導を徹底するという、「二社制限、先決優先主義」をとつており、上告人においても、昭和四四年度の募集に際し、少なくとも滋賀大学において右の先決優先の指導が行われていたことは知つていた。被上告人は、上告人から前記採用内定通知を受けた後、大学にその旨報告するとともに、大学からの推せんを受けて求人募集に応募していた訴外ダイキン工業株式会社に対しても、大学を通じて応募を辞退する旨通知し、大学も右推せんを取り消した。その後、上告人は、昭和四三年一一月頃、被上告人に対し、会社の近況報告その他のパンフレツトを送付するとともに、被上告人の近況報告書を提出するよう指示したので、被上告人は、近況報告書を作成して上告人に送付した。ところが、上告人は、昭和四四年二月一二日、突如として、被上告人に対し、採用内定を取り消す旨通知した。この取消通知書には取消の理由は示されていなかつた。被上告人としては、前記のとおり上告人から採用内定通知を受け、上告人に就職できるものと信じ、他企業への応募もしないまま過しており、採用内定取消通知も遅かつた関係から、他の相当な企業への就職も事実上不可能となつたので、大いに驚き、大学を通じて上告人と交渉したが、何らの成果も得られず、他に就職することもなく、同年三月滋賀大学を卒業した。なお、上告人の昭和四四年度大学卒新入社員については、同月初旬に入社式の通知がなされ、同時に健康診断書の提出が求められた。右入社式は、同月三一日に大学新卒の採用者全員を東京に集めて行われたが、式典は一時間余りで、社長の挨拶、先輩の祝辞、新入社員の答辞、役員の紹介、社歌の合唱等がなされた。式典に集つた新入社員は、その日、式典終了後、卒業証明書、最終学年成績証明書、家族調書及び試用者としての誓約書を提出し、東京で約二週間の導入教育を受けたのち、上告人の各事業部へ配置され、若干期間の研修の後それぞれの労務に従事し、上告人の定める二か月の試用期間を過ぎた後の同年六月下旬に、更に本採用者としての誓約書を保証人と連署して提出し、社員としての辞令書の交付を受けた。上告人における大学新規卒業新入社員の本採用社員としての身分取得の方法は、昭和四四年度の前後を通じて、大体右のようなものであつた。
以上の事実関係のもとにおいて、本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であつて、被上告人の本件誓約書の提出とあいまつて、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和四四年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのを相当とした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。」

※内定とは「始期付解約権留保付労働契約」(=契約の始期は卒業時,通常の契約のほか一定事由を理由とする解約権が会社側に留保された労働契約)である,との判断が示されています。

2 内定の取消事由

採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。

※この事案では,内定取消しの理由が「労働者がグルーミーな印象であること」でしたが,裁判所は,こうした印象については採用内定を出す段階で分かっていたことであることを理由に,内定取り消しをことは無効と判断しました。

電電公社近畿電通局事件(最二小判昭和55年5月30日民集34巻3号464頁)

採用内定の法的性格について,上記代人本印刷事件と同様の判断を示したものです。

 一 原審が適法に確定した事実関係は、およそ次のとおりである。
 (一) 上告人は、昭和四三年三月大阪府立の高等学校を卒業、一時学校の事務職員として就職したが、同四四年六月三〇日退職し、同年八月被上告人近畿電気通信局(以下「近畿電通局」という。)の社員公募に応じ、同年九月七日に一次試験(適性検査、一般教養筆記試験、作文)を受けてこれに合格し、同月二六日に二次試験(面接、健康診断)を受け、その際同時に、高等学校卒業証明書、同成績証明書、戸籍抄本及び健康診断書を提出し、同年一〇月上旬に身元調査があり、同年一一月一〇日ころに近畿電通局長名義の同月八日付の本件採用通知を受領した。
 (二) 本件採用通知には、(1) 上告人を昭和四五年四月一日付で被上告人において採用すること、(2) 上告人を仮に大阪北地区管理部に配置し、別途、上告人の通勤が可能である管内の局所に正式に配置すること、(3) 採用職種は機械職とし、身分は見習社員とすること、(4) 入社前に再度健康診断を行い、異常があれば採用を取り消すことがあること、(5) 入社を辞退する場合は、速やかに被上告人所定の事務所に書面でその旨を連絡することなどが記載されており、併せて、その同封書類として、身元保証書用紙、誓約書用紙及び「貸与被服の号型調査について」と題する書面が被上告人から上告人に送達された。
 (三) 上告人は、所定期限であつた昭和四四年一二月二〇日までに、被服号型報告表に所定事項を記載して近畿電通局長に送付した。また、昭和四五年元旦に、被上告人の大阪北地区管理部長から「来る四月からの上告人の入社を歓迎する」旨の年賀状を受領し、更に右管理部長から「懇談会の御案内と諸行事のお知らせ」と題する同年二月三日付書面を受領したので、それに従つて入社懇談会に出席し、約四〇〇名の出席者とともに、被上告人の事業内容について説明を受けたうえ、健康診断を受け、次いで同年三月中旬入社前教育の一環として、大阪府池田電報電話局を見学した。
 (四) 被上告人に勤務する者は、役員、職員及び準職員に区分され、そのうち準職員は、更に見習社員、特別社員等に区分されるが、いずれも二か月以内の期間を定めて雇用する者であるところ、見習社員とは、職員に採用することを予定して雇用される者をいうものである。
 (五) 被上告人の見習社員の採用については、「職員及び準職員採用規程」及び「準職員の雇用等に関する取扱について」と題する通達があり、それらによれば、募集、採用試験、身上調査、誓約書・身元保証書・戸籍の謄本又は抄本の提出、就業規則の指示説明等について規定がなされており、見習社員に採用することに決定した者に対しては、誓約書、身元保証書、戸籍の謄本又は抄本を提出させた後において、辞令書を交付するものとし、右各書類を所定期日までに提出しなかつた者については、その採用を取り消し得る旨が定められている。
 (六) 上告人は、高等学校卒業後豊能地区反戦青年委員会に所属し、その指導的地位にあつた者であるが、昭和四四年一〇月三一日午後九時ころに大阪鉄道管理局前において開催された国鉄労働組合及び動力車労働組合の機関助士廃止反対に関する集会に右地区反戦青年委員会の一員として参加し、場所を移動すべく、約五〇名の集団を指揮して車道に入り、シユプレヒコールをしながら車道上をデモした際、その先頭に立つて笛を吹き、約五〇メートル移動した際に、待機中の警察機動隊によつて無届デモとして規制を受け、大阪市公安条例違反及び道路交通法違反の現行犯として逮捕され、右行為につき、同年一二月一一日に起訴猶予処分を受けた。
 (七) 被上告人は(六)の事実を知らずに本件採用通知をしたのであるが、被上告人の職場の一部においては、昭和四四年秋ころから同四五年初にかけて、反戦青年委員会に所属ないし同調する被上告人の職員によつて、種々の激烈な闘争行為がなされ、そのため、職場の秩序が混乱し、業務の遂行も阻害されたことがあり、同年三月六日ころ被上告人において上告人が前記のとおり逮捕・起訴猶予処分を受けた事実を探知するに至つたため、近畿電通局長は上告人に対し、本件採用通知による採用を同月二〇日付で取り消す旨の本件採用取消通知をなし、それが翌二一日上告人に到達した。
 二 以上の事実関係によれば、被上告人から上告人に交付された本件採用通知には、採用の日、配置先、採用職種及び身分を具体的に明示しており、右採用通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたと解することができるから、上告人が被上告人からの社員公募に応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する被上告人からの右採用通知は、右申込みに対する承諾であつて、これにより、上告人と被上告人との間に、いわゆる採用内定の一態様として、労働契約の効力発生の始期を右採用通知に明示された昭和四五年四月一日とする労働契約が成立したと解するのが相当である。もつとも、前記の事実関係によれば、被上告人は上告人に対し辞令書を交付することを予定していたが、辞令書の交付はその段階で採用を決定する手続ではなく、見習社員としての身分を付与したことを明確にするにとどまるものと解すべきである。そして、右労働契約においては、上告人が再度の健康診断で異常があつた場合又は誓約書等を所定の期日までに提出しない場合には採用を取り消しうるものとしているが、被上告人による解約権の留保は右の場合に限られるものではなく、被上告人において採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合をも含むと解するのが相当であり、本件採用取消の通知は、右解約権に基づく解約申入れとみるべきである。したがつて、採用内定を取り消すについては、労働契約が効力を発生した後に適用されるべき日本電信電話公社法三一条、日本電信電話公社職員就業規則五五条、日本電信電話公社準職員就業規則五八条の規定が適用されるものでないことも明らかである。
 ところで、前記の事実関係からすれば、被上告人において本件採用の取消をしたのは、上告人が反戦青年委員会に所属し、その指導的地位にある者の行動として、大阪市公安条例等違反の現行犯として逮捕され、起訴猶予処分を受ける程度の違法行為をしたことが判明したためであつて、被上告人において右のような違法行為を積極的に敢行した上告人を見習社員として雇用することは相当でなく、被上告人が上告人を見習社員としての適格性を欠くと判断し、本件採用の取消をしたことは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができるから、解約権の行使は有効と解すべきである」

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