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退職勧奨、退職合意に関する裁判例

退職勧奨、退職合意に関する裁判例

退職勧奨、退職合意に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

降格が退職勧奨の一環であるとの労働者側主張が否定された事例(東京地裁令和3年12月21日判決)

本件は、労働者側が、会社側の退職勧奨が違法であるとして損害賠償等を求めた事案ですが、当該労働者に対してなされた降格処分が退職勧奨の一環に当たるかどうかが争点になった点が特徴の事案です。

この点、裁判所は以下のとおり述べ、降格処分が退職勧奨の一環に当たるという原告主張を認めませんでした。

「原告は、本件降格は、原告が被告会社の退職勧奨に応じなかったことや、労働局に被告会社への助言・指導の申出をしたことなどに対する制裁、意趣返し目的で退職勧奨の一環としてなされたものであると主張する。

 しかしながら、前記のとおり、原告は復職から本件降格までの1年9か月間にわたって、売上げを全く上げることができず、管理職である主任技師に期待される所属部署の業績への貢献を十分に果たすことができなかったものであり、被告会社が原告を管理職である主任技師から被管理職である技師に降格させる業務上の理由や必要性が認められる。本件降格がされるまでの間に、退職勧奨の趣旨が含まれる本件研修等がされたことや、それでも原告が退職に応じず、被告会社の働き掛けは違法な退職勧奨に当たると抗議し、労働局長に被告会社への助言や指導の実施を求めた事実があることを考慮しても、上記のとおり原告が復職後長期間にわたって売上げを全く上げることができず、管理職として期待される役割を十分に果たすことができなかった事実に変わりはないことに照らすと、本件降格が、上記のような原告の言動に対する制裁や意趣返しとしてされたとか、退職勧奨の一環としてされたものとは直ちに認めることができない。また、前記1(24)及び(25)の認定事実のとおり、被告会社は、原告が被告会社に違法な退職勧奨がされていると抗議したり、労働局に同様の相談をした後に、原告にコミュニケーションの改善等を目的とする研修を受けさせ、原告がPMPの資格を失効することを免れさせたことや、平成30年度上記の初めに、同期中に売上げ目標を達成することができなかった場合には降格がある旨を予告し、原告に降格を免れるための努力をする機会を与えていることに照らしても、本件降格が原告の主張するような制裁や意趣返し目的等で行われたとは認め難い。

 原告のその余の主張を考慮しても、本件降格が不当な動機・目的を持ってされたものであったとは認められない。」

※降格自体に合理性があったこと、降格を免れさせるための措置を取っていたこと、等の事情が理由付けの要旨となっています。

解雇に伴う退職合意の成立を否定したが,他社への再就職後半年から1年の経過をもって退職合意(黙示)の成立が認められた事例(東京地裁平成31年4月25日判決)

本件は,要旨,会社から解雇された労働者ら(トラック運転手)が当該解雇の有効性を争った事案です。この中で,会社側は,①解雇通所を労働者側に交付した際に労働者側が「もういいですよ」と言って解雇通知書を受け取り退室したこと②解雇後,会社とは別の場所で就労したことを理由に,退職合意が成立した,と主張していました。

裁判所は,要旨以下のとおり延べ,①に基づく退職合意は否定しましたが,②に基づく退職合意の成立を認めました(※なお,解雇自体は無効と判断されています。)。

①について

「同日の原告らと被告との間のやり取りは,上記1(2)の認定事実のとおりであるところ,原告らが本件解雇通知書等を手に取り,部屋を出たのは,被告代表者から,本件解雇通知書等を取るのか,それともこれまでの行動を謝罪するとともに,これまでの交渉を全て白紙に戻すのかのいずれかを選択するように求められたためであり,その後,原告らが被告代表者に対し不当解雇である旨を述べていたことからも明らかなように,原告らが被告に対し被告を任意に退職する意思を有していたということはできない(原告らの「もういいですよ。」等の発言についても,上記の選択を求めた被告代表者の意思が固いことを認識し,それ以上の交渉を断念したことによりされた発言であり,当該発言をもって被告を任意に退職することを了承した趣旨であると解することはできない。)。」

②について

「原告らは,上記1(4)アないしウのとおり,本件各解雇からほとんど間を置かずに,同業他社に就職するなどしてトラック運転手として稼働することにより,月によって変動はあるものの,概ね本件各解雇前に被告において得ていた賃金と同水準ないしより高い水準の賃金を得ていたものである(なお,被告においては,上記1(3)エのとおり,本件各解雇後に,本件提案通りのベースアップが行われているものの,当該ベースアップは,最後まで本件提案に応じなかった原告ら6名が退職し,アイドリングストップ等による経費削減が実現されることにより初めて可能となったものであるから,本件各解雇後の原告らの就労意思を判断するに当たって,当該ベースアップ後の賃金を比較対象とするのは相当でない。)。これらの事情に加え,上記(1)及び(2)のとおりの本件各解雇に至る経緯を考慮すると,原告Aについては,遅くともLに再就職した後約半年が経過し,本件各解雇から1年半弱が経過した平成29年11月21日の時点で,原告B及び原告Cについては,遅くとも本件各解雇がされ再就職した後1年が経過した同年6月21日の時点で,いずれも客観的にみて被告尾における就労意思を喪失するとともに,被告との間で原告らが被告を退職することについて黙示の合意が成立したと認めるのが相当である。」

大型車両の運転手の雇用契約に関する退職合意の有効性が否定された事例(名古屋高裁平成29年1月11日決定)

本件は、ダンプカーの運転手であった労働者について、勤務先会社が、労働者との間で退職合意が成立したと主張した事案です(その他、解雇の有効性等も争点になりましたが、本項との関係では割愛します。)。

会社側は、労働者の態度(会社側からの連絡に対応しなかったこと等)を理由に、退職合意が成立したと主張していました。

この点、裁判所は「相手方(※会社)は、乙山(※会社代表者)が、平成27年5月29日以降、出社して負傷の状況確認をさせるよう何度も電話で要請したが、抗告人(※労働者)は、出社の意思はない旨述べ、負傷状況の確認も拒否し、乙山からの電話に応じなくなったから、退職の合意又は退職の意思表示があったものと評価できる旨主張する」という会社側の主張について、会社が主張する事実の存在自体は認めましたが、「これらの経緯をもって、本件合意退職があったものと評価することはおよそ困難と言わざるを得ない」としました。

また、「抗告人は、乙山に対し、「やはり首ですよね?はっきりしないと仕事を探すにも探せません」「首ですね?」「乙山さんの会社を辞めないと行けませんけど」と述べ、乙山は「仕事さがしてみてはいかがですか」「雇用保険受付してもいいですよ」と応じ、抗告人が、雇用保険受付について「お願いします」と返信したこと、乙山は、抗告人の求めに応じ、平成27年6月19日、抗告人の雇用保険被保険者離職票を作成し、抗告人に交付したことが一応認められる。しかし、これらやりとりは、抗告人が、乙山から、他の会社に抗告人を紹介しようとしたが断られた旨の手紙を受け取った後になされ、雇用関係が既に終了しているかのような乙山の対応を前提とするものであって、かつ、負傷により通院中であり、当面の生活費にも困っている中で金銭給付を受けるためになされたものである。そのような事情を踏まえると、上記やりとりをもって抗告人が退職を受け入れ本件合意退職等をしたものと一応認めるには足りないというべきであり、その他これを認めるに足りる疎明資料はない。」として、退職合意の成立を否定しました。

※一言コメント

確かに、本件の労働者には退職を前提とした言動がありますが、退職合意が成立していないと判断されました。「雇用関係が既に終了しているかのような乙山の対応を前提とするものであって、かつ、負傷により通院中であり、当面の生活費にも困っている中で金銭給付を受けるためになされた」という事情が、判断において重要なポイントだったものと思われます。

妊娠が判明したことをきっかけとする退職合意の有効性を否定した事例(東京地裁立川支部平成29年1月31日判決)

本件は、要旨、妊娠を契機に、勤めていた会社の代表者の勧めで派遣会社に登録した女性労働者について、会社側が「派遣会社への登録を受け入れたことをもって退職合意が成立した」と主張したため、当該合意の成否が争点となりました。

この点、裁判所は「被告は、妊娠が判明した原告との間に退職合意があったと主張するが、退職は、一般的に、労働者に不利な影響をもたらすところ、雇用機会均等法1条、2条、9条3項の趣旨に照らすと、女性労働者につき、妊娠中の退職の合意があったか否かについては、特に当該労働者につき自由な意思に基づいてこれを合意したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか慎重に判断する必要がある」との基準を示しました。

そして、本件については「確かに、原告は、現場の墨出し等の業務ができないことの説明を受けたうえで、株式会社TRUSTMEDIATIONへの派遣登録を受け入れ、その後、平成27年6月10日に、被告代表者から退職扱いとなっている旨の説明を受けるまで、被告に対し、社会保険の関係以外の連絡がないことからすると、原告が退職を受け入れていたと考える余地がないわけではない。しかしながら、被告が退職合意のあったと主張する平成27年1月末頃以降、平成27年6月10日時点まで、被告側からは、上記連絡のあった社会保険について、原告の退職を前提に、被告の下では既に加入できなくなっている旨の明確な説明や、退職届の受理、退職証明書の発行、離職票の提供等の、客観的、具体的な退職手続がなされていない。他方で、原告側は、被告に対し、継続して、社会保険加入希望を伝えており、平成27年6月10日に、被告代表者から退職扱いとなっている旨の説明を受けて初めて、離職届の提供を請求した上で、自主退職ではないとの認識を示している。更に、被告の主張を前提としても、退職合意があったとされる時に、被告は、原告の産後についてなんら言及をしていないことも併せ考慮すると、原告は、産後の復帰可能性のない退職であると実質的に理解する契機がなかったと考えられ、また、被告に紹介された株式会社TRUSTMEDIATIONにおいて、派遣先やその具体的労働条件について決まる前から、原告の退職合意があったとされていることから、原告には、被告に残るか、退職の上、派遣登録をするかを検討するための情報がなかったという点においても、自由な意思に基づく選択があったとは言い難い。以上によれば、被告側で、労働者である原告につき自由な意思に基づいて退職を合意したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することについての、十分な主張立証が尽くされれているとは言えず、これを認めることはできない。」として、退職合意の有効性を否定しました。

※一言コメント

いわゆるマタハラ(マタニティー・ハラスメント。妊娠・出産を理由とした不利益取り扱い)が社会問題として認知されている状況や、退職が労働者に与える不利益の程度に鑑みると、退職の意思を周辺事情から推認することには慎重であるべきで、判旨は妥当と考えます。

退職合意の成立が否定された事例(東京地裁平成27年12月22日判決)

本件は、税理士事務所を営む被告にて雇用されていた原告が、被告から労務の提供を拒絶されているとして、雇用計画関係にあることの確認及びその間の賃金支払い等を請求したという事案です。

被告側は、「原告との間で退職の合意が成立していた」と主張しており、退職合意の存否が争点となりました。

この点、裁判所は、「被告は、平成25年12月4日に本件退職合意が成立した旨主張しているところ、確かに、原告は、同日の午前中に被告事務所において、被告との会話の中で、翌年1月末に退職する旨発言し、同じ日に同僚である他の事務員らにも同旨を口頭で伝え、帰宅後には被告に対して退職を前提にしたメールを送信し、同月5日、翌6日の勤務時間中は何事も無く推移し、同日の退勤間際に退職しない意思を表明し本件退職合意の存在を否認しているため、外形的には同月4日に本件退職合意が成立して同月6日に退職の申し出を撤回しようとしているようにも見える」として、外形的には退職合意と見られるものが存在したことは認めました

しかし、続けて「しかし、本件て確定的な退職申し出の意思表示があるか否かを検討するに、平成25年12月4日当時、原告はこれまで被告から退職勧奨を受けたことはなく、退職に関して全く問題意識がないまま被告との面談を開始していること、面談中も原告自らが退職を発言するまで退職の話題は全く出ていないこと、当時は正社員として被告事務所に勤務していたものであり、簡単に退職を決意するような動機も見当たらないこと、その発言に至る経緯を見ると、同日、原告は出勤した際に被告から前日の電話保留時間の件や勤務態度の件で問題点を指摘され反省を求められ、これを素直に受け入れることができないでいる中で突如として退職の申し出を述べているのであり、熟慮の上で発言しているとは考えられず、むしろ自分の非を指摘されてその反発心から突発的になされた発言と理解するのが素直であること、発言後の経緯を見ても、同日午後、原告は他の事務員にも退職する旨を伝えているが、同時に(中略)他の事務員との関係を修復しようとする態度が強調され、また、同日帰宅後に被告に対してメールを送信しているところ、その内容は(中略)原告が被告から指摘された問題点を反省して今後は努力する旨をあえて強調している様子がうかがわれ、この状況からは、軽率に退職を発言したことを後悔しつつも自分からは退職申し出の撤回を言い出すことができず、周囲が自分を理解して退職を引き留めてくれるのを期待している心情も読み取れること、同日に退職する旨発言してから、翌5日は通常通り勤務し、翌6日の夕刻に退職しない旨発言しているところ、その間に退職を前提とした手続きが取られた形跡はないことに鑑みると、本件では、被告の発言をもって確定的な退職の意思表示があるとはいえず、本件退職の合意が成立したとは認められない」として、労働者の退職の意思表示自体を否定し、故に退職合意の成立も否定しました。

※ひと言コメント

労働者が退職する旨の発言をしていたこと自体は認定しながら、それが真意ではなかったと結論づけた点に特色があります。労働者の真意の認定については、異なる考え方(退職の合意は成立していた)も十分にありえた事案ではないかと思います。

 

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