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アカデミック・ハラスメントに関する裁判例

アカデミック・ハラスメントに関する裁判例

アカデミック・ハラスメント(アカハラ)に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

教授が学生に行ったハラスメント行為を理由とした減給処分が有効と判断された事例(東京地裁平成31年4月24日判決)

本件は,学生に対する不適切なメールを送信したこと等がハラスメントに当たるとして懲戒処分としての減給処分を受けた大学准教授が,当該減給処分は無効と主張して争った事案です。

裁判所は,以下のとおり,アカデミック・ハラスメント性を認定し,懲戒処分の有効性を認めました。

「本件メールの内容は別紙2(略)のとおりであるところ,その内容をみると,原告の意にかなう行動をとれていない学生,しかも,平成28年7月のゼミ志望から原告との接点ができたばかりで,依然,ゼミ履修登録予定者にすぎなかった程度の1学年に在籍する学生らに対し,その履修・活動姿勢に不足があるとみるや,同人らを「アホ」と繰り返し指摘して非難し(略),発言しようとしない消極的な姿勢の学生をみるに及んでは「金魚のフン」などと評価的表現をしてその姿勢を苛烈に非難し(略),学生らが無為に夏休みを過ごそうとしていると感じるや,「馬さんと鹿さん」,「お馬さんがいます。鹿さんもいます」などと,揶揄するような侮辱的表現を殊更に用いてその姿勢の問題性を強調するなどしており(略),このような表現を短期間に多数,繰り返し用いている点において,総じて学生を侮辱し,その人格や尊厳を傷つけるべき言動として,教育者としての配慮に著しく欠けるものであったと評価せざるを得ない。

 この点,原告は,日経STOCKリーグへの厳しい指導を仰いできたゼミ生らへの教育上の指導に過ぎない,関西弁の軽い突っ込みのようなものであったなどとも主張する。確かに,これらのメールの内容等に徴すると,同メールがそのような教育的指導の目的に出たものとも理解できないではないが,それにしても,文意やその印象が読み手の立場や状況によって変わり得るメール内の文章において,単位認定の権限がある指導教授から,ゼミへの活動はおろか大学(短期大学部)に入ってからも間がない学生らに対して繰り返し用いる表現としては行き過ぎであることは否めず,しかも,原告らが上記メールの送信後,送信を受けた学生らに対し,特段の配慮を尽くした形跡は証拠上窺われない。原告は,「馬さん」「鹿さん」という表現につき,ゼミ生たちを笑わせようとして過去に送った動画について述べたものであったなどとも主張し,確かに,かかる表現を用いたメールには動画サイトのインターネットアドレスが引用されてもいるが,こうした表現は,ゼミ生らが夏休み期間を無為に過ごしているとして,そのような態度を非難するメールの中で述べられており,そのようなゼミ生の姿勢をして「馬鹿(バカ)」という意味に通じて表現していることは文脈上明白であるし,上記同年8月26日及び同年9月13日のメールの文面全体に照らし,ゼミ生らを厳しく叱責する内容であることは明らかであり,およそゼミ生らを笑わせようとする冗談めかした内容であるとは認められない上,動画サイトの引用も小馬鹿にする文意の中で用いられた程度のものにすぎないから,原告の上記主張は採用することができない。

イ しかも,原告は,本件メールにおいて,原告の意にかなう行動をとれていない学生に対し,「Bを,本・気・で・怒・ら・せ・る・と,どうなるか」という言葉に続けて「他ゼミへの移行手続きを検討します 他ゼミがNOであれば,所属ゼミはなしとなります」などと指摘し,その姿勢を痛烈に批判しているところ(略),そのような表現は,前記のとおり短期大学部においてゼミ(卒業研究ゼミ)が必修科目とされていたことをも考え併せると,受け手であるゼミ生らに対し,修学上大きな支障を生ずべき事態を生じかねさせないとの不利益を告知して不安感を煽り,威嚇的とも受け取られるものであって,教職員の発言として著しく配慮に欠けるものといわざるを得ない。

(中略)

ウ その上,原告は,本件メールにおいて,意に沿う履修態度を示さない学生らに対し,度々,就職活動支援活動等に携わっていたDによる就職支援活動を停止させるなどと告げ,ときには「永久凍結」,「永久凍土」などとして当該措置が永続的に続くともとれる表現をする一方(略),そのような学生を採用する奇特な企業はブラック企業かダメダメ企業しかないとか(略),来年度のBゼミでは夏休み前の内々定はゼロ,後期の積雪の頃に誰でも入れるブラック内定となるなどと告げ(略),さらには,「あのままの体たらくであれば,私がそれを阻止します。ブラックを歩ませます。1年で退職です。あとはフリーター。」などと指摘して,その履修態度を苛烈に非難している(略)。一般に,学生らにとって就職先の内定が得られるか否かは将来の人生設計に関わる重大事であるところ,原告によっても,Dは,被告の大学の就職活動支援において顕著な実績を残していたというのであるから(略),そのような支援が得られない事態を生じるとすれば,学生らに重大な懸念を生じさせることとなることは自明であって,原告の上記メールは,更に不利益な内容を具体的に告知し,学生らの不安感を煽る威嚇的な表現と受け止められるものであったと言わざるを得ない。

(中略)

(※その他,Dが学生らに就職活動支援停止を伝える不適切なメールを送付していたことについて)

「前記のとおり,学生らにとって就職又は就職活動支援を得られることは重大な関心事というべきであり,これをもって指導を強制することは,たとえ教育指導目的に出たものであっても行き過ぎのものとして不適切というべきところ,原告の意向を踏まえてDが上記のとおり不適切なメールを送信しているのに原告がこれを制止せず,むしろ,学生が頼るべき指導教官自身がこれに同調する態度をとっていることは,その喪失感を深める極めて不適切な行為といわざるを得ない。この点,原告は,Dの指導は,元来,冗談交じりでダメ出しをするというものであったなどとも主張するが,だからといって,上記内容のメールを送信することが正当化されるものではない。また,原告は,Dの行為の責任を原告に押し付けることになり不当であるなどとも主張するが,そもそもDが上記のようなメールを送信するようになったのはひとえに原告が就職活動支援を停止するようDに求めたのが発端であり(略),その点からして原告に責がないとは到底いえず,むしろ,その後もDに同調ないし助長していることは上記説示のとおりであるから,この点に照らすと,むしろ,原告には大きな責任があるとも認められる。

(中略)

カ 以上の点に照らすと,本件メールのうち原告から送信されたもののうちには,連絡が取れなくなり,安否が心配された学生に対する叱咤ととれる直ちに不当とはいい難いメールもあるものの(略),既に説示したとおり,学生に対する暴言ともいうべき人格を傷つける言葉を繰り返し使用している点,威嚇的とも受け止められる不適切な言辞を用いて,学生に圧力を与え,指導に従わざるを得ないような状況にさせている点において,被告の防止委員会規程所定のアカデミック・ハラスメントに該当する行為があったといわざるを得ない。」

准教授が学生に行ったハラスメントを理由とした減給処分が有効と判断された事例(東京地裁令和元年5月29日判決)

本件は,学生に対するセクハラ・パワハラ等を理由として懲戒処分としての減給処分を受けた大学准教授が,当該減給処分は無効と主張して争った事案です。

裁判所は,懲戒処分の有効性を認めました。以下では,認定されたハラスメント行為の一部についての判示を抜粋します(当該行為のほか,学生の交友関係に対する過度の干渉,学生と二人きりでの食事を求めたこと,再試験に関して便宜を図ろうとしたこと,というハラスメント行為が認定されています。)。

「原告は,C(女子学生)に対し,A(女子学生)について「bitchになることを望むって・・・金銭的困窮とは無縁の人なので・・・日頃うまく『処理』ができていないのではと,婦人科的(orカウンセラー的)にすごく心配になってきました。(あくまでも医学的な心配ではありますが,女性に対するメールなのにデリカシーに欠ける話題でゴメンナサイ」などというメール(本件メール①)を送信しているところ,このようなメールの内容は,「(orカウンセラー的)」,「あくまでも医学的な心配ではありますが」などという文言も文面にちりばめられてはいるものの,上記のとおり「bitch」という文言について言及されており,これが性的にふしだらな女性という意味合いで用いられているのはその文脈に照らし明らかであることや,「婦人科」,「女性に対するメールなのにデリカシーに欠ける話題でゴメンナサイ」などという文言も使用されることにより,Aが性的な欲求処理をうまくできていないと示唆する内容であると認められるのであって,そのようなメールを送信する行為(本件行為①)は,本件防止規程所定の性的言動に当たるというべきである。この点,原告は,「処理」とは婦人科的な「欲求処理」を意味し,対処としては,医学的な対処のほか,スポーツや趣味に打ち込むことにより発散されることもあるのであって,これを短絡的にセクハラに結びつけることには飛躍があるなどと主張するが,上記判示のとおり,前後の文脈に照らし,およそ採用し難い。

 そして,Aは,原告がそのような表現が含まれるメールをCに送信していた事実を,後日,Cから当該メールの転送を受けるなどして認識したものであるところ(前記認定事実(3)ク),原告は,当時,電気システム工学科の准教授として学生の指導に当たる立場にあった者であり,殊に,Aからすれば,原告は,Aも受講していた「電気システム実験Ⅰ」や「電気システム実験Ⅱ」の指導担当教員でもあった上(同(1)及び(2)ア),教員としての信頼関係を前提に,海外留学の是非等の個人的な相談を持ち掛けていた相手方でもあったのであるから(同(3)ア,イ),そのような表現を,A自身には秘密裡に,被告大学においては女子学生が少ない中(同(2)),当時疎遠となってはいたものの知人ではあった女子学生のCにしていたことを知れば,AはもとよりAと同様の平均的な立場の女子学生であっても,その就学意欲を低下させる行為であると評価することができ,事実,Aも,そのような表現がなされていたことを知り,不快の念を持ったものである(同(3)ク)。

 そうしてみると,原告の上記メール送信行為(本件行為①)は,前記本件防止規程の趣旨目的に照らし,相手を不快にさせる性的言動により,相手に精神的,肉体的な苦痛又は困惑を与える行為,すなわち本件防止規程所定のセクハラに該当するものと認められる。

イ これに対し,原告は,相手を不快にさせる性的言動により相手に精神的な苦痛及び困惑を与えたのはCであって原告ではない,あるいは,CからAへの本件メール①の転送行為は,Cの悪意に基づく故意行為であって原告には予見できなかったなどと主張する。

 確かに,本件メール①をAに対して転送したのはCであって,原告自身がAに送信したものではない。しかしながら,原告がAの交友関係を憂慮し,Aがいわゆるbitchになるのを望むと述べたという点に対し批判的な見解を示すにしても,そのために,Aの性的な処理ができていない云々という内容に触れる必要性はおよそないというべきであるし,前提事実(3)アのとおり,被告において相互の信頼によって教育・研究や業務を行える環境を維持することを目的として本件防止規程が設けられるなど厳にハラスメントが禁じられている趣旨をも考慮すれば,そもそも,上記のような内容は,対象とする学生に直接告げるが別の学生に告げるか否かを問わず,准教授である原告が触れるべき内容ではないというべきである。このように,原告が本件メール①のような内容のメールを送信すること自体が問題であるから,それが転送されたことについても責任を免れるものではない。また,Cは,当時,Aとの関係性が疎遠とはなっていたものの友人であったものであり,AやCの所属していた電気システム工学科には女子学生も少なく,Aも,Cとの関係改善を目指していたというのであるから(前記認定事実(3)ウなど),本件メール①の内容を転送等によりAが認識する可能性のあることについては教員として当然認識すべきものであり,予見が不可能であったなどとはいえない。Aに対する本件メール①の転送をもって原告への悪意を持っていたCの故意行為であるなどとする点についても,前記認定事実のとおり,Cは,原告がBに宿泊のためのホテルを用意するとの申出をしたことを聞き知って原告に対する不信感を抱くようになり,Aに対して同メールを転送するに至ったものであって(同(3)ク),悪意に基づく行為であるとはいえないし,同メールが転送されたものであることを理由に原告が責任を免れるものでないことは,既に説示したとおりである。

 したがって,原告の前記主張については,いずれも採用することができない。

ウ 原告は,日弁連指針におけるセクハラの定義として「性的な情報を意図的に流布すること」は含まれるものの,意図せずして流布した場合は含まれないとされているとも主張するが,そもそも,同指針は,留意すべき典型例を例示して留意を促すものにすぎず,個別の具体的事案における個々の行為がセクハラに該当し得べきことを否定するものではないから,その主張は前提を誤るものといわざるを得ない。

エ なお,原告は,CがAに対する転送の際,メールの一部を意図的に切り取った上,Aが不快に感じると想定される部分にわざわざ下線を付し,強調するなどしてAに送信していたとか,被告は切り取られたメールを原告が送信したなどと事実誤認をしている等とも主張して争う。しかし,前者の点については,メールの本文自体,客観的にみても就学意欲を低下させ得べきものであることは前判示のとおりであり,Cにおいて下線を付したからといってその意味内容に変化が生じるわけでもないから,この点をもって,本件防止規程所定のセクハラ該当性が左右されるものではない。後者の点についても,被告は,そもそもそのような意味内容を含むメールをCに送信していたことを問題としているものであって,切り取り後のメールを送ったことを問題とする趣旨とは解されず,原告の上記主張は,前提を違えるものである。したがって,これら主張の点によっても,前記判断が左右されるものではない。

オ 以上のとおり,本件行為①は,本件防止規程所定のセクハラに該当するものと認められる。」

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