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採用内定に関する裁判例

採用内定に関する裁判例

採用内定に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

飲み会の席での発言を理由とした内定取り消しが有効とされた事例(東京地裁令和4年9月21日判決)

本件は、内定後の飲み会(歓迎会)の席での発言を理由として内定が取り消されたことに尽き、その有効性が争点となった事案です。

裁判所は以下のとおり述べ、内定取り消しは有効と判示しました。

2 争点に対する判断
(1)採用内定期間中の解約権留保の行使は、試用期間における解約権留保と同様、労働契約の締結に際し、企業者が一般的には個々の労働者に対して社会的に優越した地位にあることを考慮し、採用決定の当初にはその者の資質・性格、能力などの適格性の有無に関連する事項につき資料を十分に収集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものという解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認することができる場合にのみ許されるものと解すべきである。したがって、採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である(最判昭和54年7月20日第二小法廷判決・民集33巻5号582頁、最判昭和55年5月30日第二小法廷判決・民集34巻3号464頁参照)。
(2)そこで検討するに、原告は、被告が本件内定取消しの理由として主張する事実について争うので、事実認定について補足的に説明する。
 被告が本件内定取消しの理由として主張する原告の言動に係る証拠としては、本件備忘録(乙4)と、証人B、証人D、証人Eの各供述等(陳述書を含む。)が存在するところ、上記証人らの供述等によれば、本件備忘録は、前記認定事実(9)のとおり、本件会食等に参加していた者が集められて事情聴取が行われ、当該事情聴取の結果を取りまとめて作成されたことが認められる(作成経緯に係る上記証人らの供述等に不自然な点は見受けられず、本件備忘録が事後的に作成されたものであると疑わせるような事情も認められない。)。このように、本件備忘録は、本件会食から間を置かず作成されたものであることに加え、その内容は上記証人らの供述等とも合致することからすると、基本的に信用することができるというべきである。
 他方、原告は、本件会食時の言動については、一次会の際の言動については、飲酒の影響も少なく覚えているとしつつ、周りの人間へのボディータッチや接触行為がなかったかについては覚えていないと曖昧な供述をし、二次会以降の言動については、いずれも記憶にないと述べるにとどまる。また、本件支店訪問時の言動について、原告は、本人尋問において、たまたま引っかかったから、ついでに受けただけである旨の発言については記憶にないと述べるものの、B支店長について、個性的な人の方が仕事ができるという意味の発言をしたこと、Dが住居のアドバイスをしてきたことについて、移動の時間とかの事情があり、続きは飲み会で教えてくださいというような話し方はしたかもしれないこと、Dに対して、Dから敬語で話をしなくてもよいという話があったことを述べる一方、敬語を使わなかったことについては否定する供述をしていないことからすると、意味合いについては別としても、外形として本件支店訪問時の言動があったことについては、おおむね本件備忘録の記載内容に沿う供述をしているとみることができ、このことからも、上記のとおりの本件備忘録の信用性が裏付けられるといえる。
 これらを踏まえ、本件備忘録やこれと合致する証人Bらの供述等については、基本的に信用できるものとして、前記1のとおりの事実を認定したものである。
(3)以上を踏まえ、前記(1)のとおりの解約権留保の趣旨に照らし、前記認定の各事実に基づいて本件内定取消しをすることが、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できるといえるか否かを検討する。
ア 本件支店訪問時の言動について
 前記のとおり、原告は、本件支店を訪問した際、Dに対し、①B支店長及びC部長について、個性的である旨の発言をしたこと、②被告への入社理由について、たまたま引っかかったから、ついでに受けただけである旨の発言をしたこと、③Dが本件支店周辺での住居について話をしようとした際、それは飲み会で話すことであるなどと述べ、会話を終わらせたこと、④敬語を使わず話をしたことが認められ、これらの言動は、証人Dが供述するように、先輩でもある被告従業員からすれば失礼と捉えられても仕方のない言動であったということができる。
 しかしながら、上記①の言動については、単に「個性的である」という発言をしたことをもって、B支店長らを「こき下ろした」とまでは評価できない(証人Dは馬鹿にしたように話していたと述べるが、原告の態度についてそれ以上に具体的な供述はなく、上記のような印象が証人Dの主観的な受け止め方によるものであることを否定できない。)。また、上記④の言動については、証人Dは原告に対して敬語を使わなくてもよいと伝えたことは認める供述等をしており、かかる経緯があったことからすれば、原告の言動が社会人としての礼節を欠いていたとまで評価することはできない(証人Dは、上記のような経緯を考慮しても、原告は異様に慣れ慣れしく侮るような態度であったと述べるが、同人は原告の具体的な発言内容等については供述しておらず、侮るような態度であったと判断した具体的な根拠も不明であるから、当該供述をもって、原告の発言が礼節を欠いていたとはいえない。)。上記③の言動は失礼と受け止められても仕方のない言動ではあるものの、その程度が甚だしいということはできず、これらの点に加え、本件内定取消しに係る書面(甲3、乙4)には、本件会食前の言動についての記載がなく、被告においても、本件内定取消し時の時点において、上記各言動を重大なものとまでは受け止めていなかったものと推認できることに照らせば、上記各言動をもって本件内定取消しの客観的合理的理由に当たるということはできない(もっとも、上記②の言動については、その内容からして被告を軽んじるものであり、被告従業員に対して礼を失する言動であったと評価できることに加え、本件会食時にも同様の発言をしていることから、当該発言と併せて考慮することとする。)。
イ 本件会食時の言動について
(ア)本件会食時の言動のうち、原告が一次会において被告従業員の肩に手を乗せて、それを支えに立ち上がる動作をしたこと等については、証人B作成の陳述書(乙7)において、「X1さんなりのコミュニケーションの取り方と思い、特段注意することなく」会話を続けていた旨の記載があることからすると、上記行為が客観的にみて社会人としての礼節を欠くものであったとか、他人を不快にさせ、職場の秩序を乱す態様のものであったとまでは評価できないから、これをもって本件内定取消しの客観的合理的理由に当たるということはできない。
 なお、本件備忘録(乙4)には、原告が一次会において当たり前のように他の社員に酒を作らせていた旨の記載があり、証人D作成の陳述書(乙8)にはかかる態度をもって横柄に感じた旨の記載があるが、本件会食が原告の歓迎会の趣旨で開かれたものであることからすると、自ら酒を用意する等の行動に出なかったことをもって礼節を欠いていたとはいえないから、この点についても本件内定取消しの客観的合理的理由には当たらないというべきである。
(イ)また、原告が前々職の退職理由として、「自分としては会社の許可を得て大きな買い物をしたつもりであったが、問題になった際に、常務に全ての責任を押し付けられた。それによって自ら会社を辞める結果となった」と述べた行為は、上記発言内容を前提としても、原告に非違行為があったために前々職を退職したのかは客観的に明らかでなく、また、原告が採用面接時に述べた「祖母の介護のため」という理由が直ちに虚偽であったということもできない(原告の前々職の退職理由を明らかにする客観的な証拠は存在せず、祖母の介護という事情がなかったことの裏付けとなる証拠もない。)。そうすると、上記発言をもって、原告が社内ルールやコンプライアンスを遵守する姿勢を欠いていたことの証左とすることはできず、また、原告が虚偽の退職理由を申告していたと評価することもできないから、同発言が本件内定取消しの客観的合理的理由に当たるということはできない。
(ウ)前記(ア)及び(イ)以外の原告の言動のうち、①DやEを呼び捨てにしたこと(二次会)、②被告への入社理由について、ついでに受けただけである、たまたま採用までのスピードが早かったため、入社することにした旨の発言をしたこと(二次会。前記のとおり、同旨の発言を本件会食前にもしている。)、③Dに対して、「やくざ」、「反社会的な人間に見えるな」と述べたこと(二次会から三次会への移動中)については、いずれも、被告従業員(上司や先輩に当たる。)に対して礼を失する行為であり、特に上記③の「やくざ」、「反社会的な人間」との表現は侮辱的なものであって、同僚に対してする発言として著しく不穏当で不適切であるというべきである。原告がかかる発言をしたことは、それが飲酒の上でなされたものだとしても、従業員同士の協調に反し、職場の秩序を乱す悪質な言動であるということができる。
 また、①原告が、「自分が10億円の買い物をしたいと言った場合、許可してくれますよね」などと述べ、Eが社内のルール等を守ることが重要であると説明したことに対して、「10億じゃなくても1億ならOKですかね」、「とにかく自分はでかいことをやるということしか考えていないんです」などと述べたこと(二次会)、②上記発言を問題視したEらが社内のルールを守ることの必要性等を説明したのに対し、原告が、会社の方針が自分の考えと異なる場合、自分のやり方を通すのは当然であるという趣旨の発言をし、Eらが被告の方針を無視してまでも自分のやり方を貫き通すつもりかと質問したことに対しても「当たり前じゃないですか」と述べたこと(三次会)は、いずれも、原告において、被告の会社としての方針に従わない旨の態度を表明するものである。そして、前記のとおり、被告従業員のEらが、かかる言動をたしなめるような発言をしていたにもかかわらず、原告が態度を改めることなく、上記のような発言を繰り返したことを踏まえると、それが飲酒の上での出来事であったとしても、原告の言動は、会社の方針(社内ルール、コンプライアンスを含む。)を遵守して業務を行うという、被告従業員に求められる基本的な姿勢を欠くものであったということができる。
(エ)そして、社内ルールやコンプライアンスを遵守する姿勢は、被告の従業員である以上、当然に必要な資質であるといえることに加え、本件支店は18名で構成される小規模な事業所であり、業務の正常な遂行のために従業員同士の協調性が求められること、特に営業職においては、社内外と円滑なコミュニケーションを図る協調性が重要かつ最低限必要な能力として求められる上、取引先との関係性を円滑にするために月に数回の会食の場に参加することがあることから、会食の場での社会人としての最低限のコミュニケーション能力、礼節が求められること、被告においては、上記資質等を原告が備えているものとの判断の下、本件採用内定をしたことがそれぞれ認められ(乙7、証人B。なお、原告もかかる資質が必要なことについて一般論としては認めている。)、これらからすると、原告の前記言動は、これらの基本的な資質を原告が欠いていたことを示すものであって、かつ、被告はかかる資質の欠如を本件採用内定時には知り得なかったといえるから、これらの理由に基づいて本件採用内定を取り消すことは、原告がB支店長及びDに対して架電して謝罪したことを踏まえても、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるというべきである。

採用内定の成立は認められなかったものの、採用への期待権侵害を理由とする損害賠償請求が認められた事例(東京地裁令和3年6月29日判決)

本件は、被告会社の採用面接を受けた原告が、被告との間で解約権留保付き労働契約(採用内定)が成立しており内定取り消しが無効であるとして、

・主位的に、労働契約上の地位確認

・予備的に、仮に採用内定の成立が認められないとしても原告の期待権が侵害されたとして損害賠償請求

を行った事案です。

裁判所は、以下のとおり述べ、採用内定の成立は否定したものの、期待権侵害を理由とする損害賠償請求を認めました。

【採用内定の成立について】

原告は、平成31131日、原告と被告の代表権を有するP1との間で、解約留保権付労働契約が成立した旨を主張する。
  しかし、1(1)で認定のとおり、当時、従業員の採用を決定する権限はYにあり、P1はその権限を有していなかったものと認められる。
  そして、1(1)で認定のとおり、平成31121に原告がP1に対し被告へ転職したい旨を告げた際、P1が、原告に対し、採用に当たり、被告の現場責任者及び会長(Y)との面接を受けることになる旨を説明したこと、一次面接の後、P1が原告に対し同面接の結果が良好であった旨を告げた際にも、Yとの面接が不要である旨の発言はしていないこと、同年2月に入った後、原告が、P4との間で、Yとの面接について言及し、「傾向と対策」を要望したことに照らすと、同年131日の時点で、原告は、P1が従業員採用について自ら決定する権限を有していなかったことを認識していたものと認めるに十分であり、被告は、原告に対し、P1の代表権に加えた制限を対抗することができるというべきである(会社法3495の反対解釈)
  したがって、P1の行為により原告と被告との間で解約留保権付労働契約が成立したとはいえず、原告の上記主張は採用することができない。

【期待権侵害について】

1(1)で認定のとおり、被告の代表取締役であるP1は、平成31121日、被告への転職を希望した原告に対し、採用された場合の給与が当時Q1から得ていた給与(月額34万円)を上回る月額39万円となることをいわゆる定額残業代部分の有無も含めて明言し、同月31日、被告の現場責任者であるP2らとの面接(一次面接)を終えた原告に対し、同面接の結果が良好であった旨を告げるとともに、就業開始の具体的日程について言及しており、採用に関し確度の高い発言をしたものということができる。また、それまで、Q1から複数の従業員が被告に転職しており、Yとの面接の結果転職に至らなかった事例も存在せず、④Q1から被告に転職した従業員の一人であるP4は、一次面接の後、Q1を退職した際の手順を尋ねた原告に対し、原告も同様に採用されるであろうとの認識か(人証略)、即座に、「明日P5さん、P6さんに辞意を表明してください」と具体的な手順を教示している。そして、原告は、これらの結果、それまでの待遇を上回る条件で被告に採用されることが確実であるとの認識を抱き、Q1に対し退職届を提出したものと認められる。
  以上の経過を踏まえると、被告から書面等による正式な採用の通知はなされておらず、原告においても採用に至るにはYとの面接が必要であることを認識していたと認められることを踏まえても、上記の原告の認(期待)は法的保護に値するものというべきであり、被告が、原告がQ1を退職する直前(在籍最終日2日前)になって、P1の提示(給与月額39万円)説明を覆し、それまでの待遇(給与月額34万円)をも下回る条件(給与月額30万円)を提示したことは、原告の期待権を侵害するものであって不法行為を構成する。
  イ 他方、前記説示のとおり、被告から書面等による正式な採用の通知はなされておらず、原告においても、採用に至るにはYとの面接が必要であることを認識していた以上、原告が、それまでの待遇を上回る条件で被告に採用されることが確実であると認識したことについて過失が認められることは否定できない。
  もっとも、(従業員採用に関する権限を制限されているとはいえ)被告の代表取締役であるP1が、採用に関し確度の高い発言をしたものと評価されること、それまで複数存在したQ1からの転職者についてYの面接により転職が頓挫した事例は存在しなかったことに照らすと、原告の過失が大きいとはいえず、原告の過失割合を2
割とするのが相当である。

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