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休職処分に関する裁判例

休職処分に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

復職可否の判断における使用者の配慮が相当と評価された事例(東京地裁令和5年1月25日判決)

本件は、休職中の大学教員が休職期間満了を理由に解雇され、その有効性等が争われた事案です。主な争点は、休職期間満了時、原告の休職事由が解消していたか否か、という点でした。

この点、裁判所は、復職可否判断における使用者側の配慮の程度に関して以下のとおり述べ、結論として、解雇は有効と判断しました。

「平成31年3月28日付けのC産業医による産業医意見書、D医師による意見書等、B病院の医師による診断書によっては、原告が休職期間満了時に教授としての職務を通常の程度に行うことができる健康状態に回復していたと認めることはできない。

(中略)

 そして、被告は、原告につき休職事由が消滅していないとの判断をしつつも、復職の可否を見極めるため模擬授業の実施を原告に提案したものであるところ(前記認定事実(4)。その際、休職期間の延長も行っている。)、被告における休職制度は解雇を猶予する趣旨の制度であって、使用者である被告において、労働者である原告の復職可否の判断(すなわち、従前の職務を通常の程度に行うことができる健康状態にあるか否かの判断)を行うことが当然に予定されているといえ、当該判断を慎重に行うため、必要な判断材料を収集しようとすることには合理性が認められることや、C産業医が意見書において指摘する配慮につき、被告が具体的な検討を行う前提としても、原告が行い得る授業の形態等につき具体的な情報が必要となることからすると、被告による上記提案もまた、合理的なものということができる。これに対し、原告は、前記認定事実(4)のとおり、復職の可否を判断するための模擬授業には応じられないとの態度をとり、最終的には被告による日程調整の連絡にも回答しなかった結果、模擬授業は実施されず(なお、原告がほかに復職可能であることに係る情報提供をした形跡もない。)、被告において、復職可否の判断を行うための判断材料を得ることができなかったものである。

 かかる経緯をも踏まえると、原告については、休職期間満了時である令和2年3月31日の時点において、被告大学の教授としての職務を通常の程度に行える健康状態にあったとは認められず、また、当初軽易な作業に就かせればほどなく従前の職務を通常の程度に行える健康状態にあったと認めることもできない。」

休職期間満了により自然退職としたことが無効とされた事例(横浜地裁令和3年12月23日判決)

本件は、要旨、休職理由である私傷病は軽快したが、別の事情により通常の就労が可能な健康状態とはいえない場合に、当初の休職期間満了に伴い自然退職とすることの可否が争われた事案です。裁判所は、本件会社の就業規則等も検討のうえで以下のとおりの判断基準を示し、結論としては自然退職は認められないと判断しました。

(1)被告会社の従業員就業規則に定める私傷病休職及び自然退職の制度は,業務外の傷病によって長期の療養を要するときは休職を命じ,休職中に休職の理由が消滅した者は復職させるが,これが消滅しないまま休職期間が満了した者は自然退職とするというものであるから,私傷病による休職命令は,解雇の猶予が目的であり,復職の要件とされている「休職の理由が消滅した」とは,原告と被告会社との労働契約における債務の本旨に従った履行の提供がある場合をいい,原則として,従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合をいうものと解するのが相当である。
 もっとも,職務を通常の程度に行える労働能力を欠くことは,いわゆる普通解雇の解雇理由ともなり得るところ,従業員が私傷病により休職したときに,その復職の要件である「従前の職務を通常の程度に行える健康状態」を,当該従業員が私傷病により労働能力を欠くことになる前のレベル(以下「私傷病発症前の職務遂行のレベル」という。)以上の労働が提供できることになったことを意味するとし,私傷病発症前の職務遂行のレベル以上のものに至っていないことを理由に休職期間の満了により自然退職とすることは,いわゆる解雇権濫用法理の適用を受けることなく,休職期間満了による雇用契約の終了という法的効果を生じさせることになり,労働者の保護に欠けることになる。被告会社の従業員就業規則77条1項が,疾病の種類に応じて休職期間を定めていること(前記第2の1(2)キ)なども踏まえると,ある傷病について発令された私傷病休職命令に係る休職期間が満了する時点で,当該傷病の症状は,私傷病発症前の職務遂行のレベルの労働を提供することに支障がない程度にまで軽快したものの,当該傷病とは別の事情により,他の通常の従業員を想定して設定した「従前の職務を通常の程度に行える健康状態」に至っていないようなときに,労働契約の債務の本旨に従った履行の提供ができないとして,上記休職期間の満了により自然退職とすることはできないと解される。

起訴休職期間が満了したことによる解雇が有効とされた事例(大阪高裁平成30年4月19日判決)

本件は,傷害致死の被疑事実で逮捕された労働者が,就業規則上の起訴休職制度に基づいて休職扱いとされていたところ,2年の休職期間満了を理由に解雇とされたことについて,これを無効と主張したという事案です。

裁判所は「起訴休職制度は,基礎により,物理的又は事実上労務の提供ができない状態に至った労働者につき,短期間でその状態が解消される可能性もあることから,直ちに労働契約を終了させることなく,一定期間,休職とすることで,使用者の不利益を回避しつつ,解雇を猶予して労働者を保護することを目的とするものと解されるところ,このような起訴休職制度の趣旨及び目的に鑑みれば,使用者は,労務の提供ができない状態が短期間で解消されない場合についてまで,当該労働者との労働契約の締結を余儀なくされる理由はないから,不当に短い期間でない限り,就業規則において,起訴休職期間に上限を設けることができると解される。

 (中略)本件就業規則の起訴休職規定は,前記の起訴休職制度の趣旨及び目的に沿うものであり,起訴休職期間の上限を2年間とする本件上限規定が不当に短い期間であるとはいい難い上,被控訴人(※使用者)は,人件費の多くを国から支給される運営交付金で賄い,その財源に応じて雇用すべき教員数を部局毎に設定,管理しており,また,起訴休職期間の上限を2年間と定めている国立大学法人が少なくないことに鑑みると,本件上限規定は,合理的な内容(労契法7条所定の「合理的な労働条件」に該当するもの)であると認められる」として,2年間の経過による解雇を有効と判断しました。

傷病休職期間満了後の復職可否について,主治医ではなく産業医の見解を採用し,期間満了による労働契約の終了が適法と判断した事例(平成29年11月30日判決)

本件は,精神不調を理由とした休職期間を満了した労働者について,会社側が復職は不可として労働契約終了扱いとしたところ,当該労働者が「復職は可能な状態だった」として,労働契約は終了していないと主張した事案です。本件では,労働者が復職できる状態だったか否かが争点となりました。この点,労働者の主治医は「復職は可能」,会社の産業医は「復職は不可能」と判断しており,医師間で見解が割れていました。

裁判所は,以下に述べる理由で,「復職は可能」とする主治医の見解を採用せず,労働者側の主張を認めませんでした。

「原告は,主治医のE医師の診断を根拠として,復職が可能である旨主張する。しかしながら,(中略)同医師の就労可能という見解(書証略)は,リワークプログラムの評価シートを参照しておらず,リワークプログラムに関与した医師の見解等を踏まえていないものである上,患者の職場適合性を検討する場合には,職場における人事的な判断を尊重する旨述べていること等の内容自体に照らし,必ずしも職場の実情や従前の原告の職場での勤務状況を考慮した上での判断ではないものである。また,E医師の意見書(書証略)に添付されているカルテ等は,「処方・手術・処置等」欄の全部及び「既往症・主要症状・経過等」の欄の一部が黒塗りされているため,原告の療養休暇取得から休職期間満了までの約3年間にわたり,主治医においてどのような診断に基づいていかなる治療をし,原告の症状にどの程度の改善がみられたのかなどの客観的な診療経過を把握することができない。以上の諸点に照らせば,原告が就労可能な程度に回復したか否かという判断に当たり,同医師の就労可能という見解を参酌することは相当ではないから,この点に関する原告の主張は,採用することができない」

「また,原告は,リワークプログラムの評価シートについて,臨床心理士が項目ごとに4段階のスコアで評価するものであり,評価者による主観が介在することもあるため,これに依拠したG医師の診断を重視すべきでない旨主張し,E医師も同旨を述べる(書証略)。しかしながら,一般的に,主治医の診察は,患者本人の自己申告に基づく診断とならざるを得ないという限界がある一方で,リワークプログラムにおいては,精神科医の指導の下,専門的な資格を持った臨床心理士が患者本人のリワークへの取組みを一定期間継続的に観察し,その間に得られた参加者の行動状況等を客観的な指標で評価し,医師と共有した上で最終的に精神科医が診断するものであることは前判示のとおりであり,原告が主張する事由をもってその評価を重視すべきでないとはいえないから,この点に関する原告の主張は,採用することができない」

※一言コメント

復職の可否について主治医と産業医の見解が相違した場合,主治医の方が本人を継続的に診断しているため,主治医の見解が採用されることが多い傾向にはあると思います。ところが,本件では,主治医の診断について,要旨①リワークプログラムの結果や職場の実情等を考慮していないこと②客観的な診療経過が不明であること,を主たる理由として,これを採用しませんでした。「主治医だから」「産業医だから」という形式面より,診断の前提となっている事実としてどのようなものがあるか等が,見解の採否を決するうえで重要だということが示唆されています。

精神疾患に伴う傷病休職期間の満了による解職が有効とされた事例(平成29年3月28日名古屋地裁判決)

本件は、精神疾患を理由として休職し、会社の定めた休職期間を満了したことにより解職となったことについて、当該解職の有効性が争われた事案です。この会社では、「テスト出局」といって、職場への復帰可否を見極めるため無給で一定期間就労し、その結果を踏まえて復職可否を判断するという制度が設けられていました。本件で、労働者側は①「テスト出局」が無給であることが最低賃金法に違反している、②テスト出局期間を経て労働者側は復職できる状態になっていた(だから解職は無効である)等の主張をしていました。

この点、裁判所は①について「同法(※最低賃金法)は、労働基準法上の賃金、すなわち「労働の対償として使用者が労働者に支払う」ものに適用されることから(最低賃金法4条、2条3号、労働基準法11条)、被告において、傷病により職務の遂行に支障があり、休職事由があるとして傷病休職を命じられた職員について、無給休職扱が定められていること自体が直ちに最低基準法に違反することにはならないと解される。もっとも、被告の職員が、傷病休職中にもかかわらず、労働基準法上の労働を行ったと認められる場合には、最低基準法の適用があることになるから、本件においては、結局のところ、本件テスト出局中に原告の行った作業が労働基準法上の労働といえるかどうか、すなわち、原告が被告の指揮命令下に置かれていたかどうかの判断によることになり、具体的には、被告のテスト出局が、傷病休職中にもかかわらず、職員に労働契約上の労務の提供を義務付け又は余儀なくするようなものであり、実際にも本件テスト出局中に原告が行った作業が労働契約上の労務の提供といえるかどうかを検討すべきことになると考えられる(最高裁平成7年(オ)第2029号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁等参照)」という判断枠組みを示しました。

そして、本件では、「テスト出局」期間中に原告労働者が行った業務について検討し、「確かに、原告が本件テスト出局中に行ったニュース制作業務等は、実際に放送されていることからしても、職員が本来的業務として行うことの一部を担当したものではあるが、実際に行った役割や作業内容が本来原告が果たすべきものと同水準に至っていたとまでは認められない」として、「本件テスト出局中に原告が行った作業が、労働契約上の労務の提供と言えるようなものとは認められない」と判断しました。

また②については、原告が復職可能の根拠として挙げる主治医F医師の診断書について検討し、「F医師の診断書は、平成26年8月27日時点では自宅療養下での心身リハビリをすることを前提とし、同年9月10日時点で図書館通いが実施でき、リズムが乱れることなく規則正しい生活を送っていることを主な根拠に復職可能と判断したにすぎず、原告が傷病欠勤及び傷病休職以前に行っていた業務の負荷にどの程度耐えられるかどうかの考慮や検証が十分行えていないのではないかという疑問があり(中略)、同年11月5日時点では睡眠障害等、症状に波が見られたことにも照らすと、本件テスト出局開始時点や開始後間がない段階で、原告の休職事由が消滅したと認めるには足りない」と判断しました。また、その後についても、診断書の前提としている事実が裁判所の認定事実と異なること、F医師の診断においても原告の不調が指摘されており必要な治療が完遂できていないこと、F医師と被告会社の産業医・管理職との面談が実現しなかったため、本件テスト出局の状況等について充分な情報がF医師に提供されていない可能性があること、等を挙げて、「F医師の意見によっても、原告について、本件テスト出局開始時から本件解職に至るまでの間に、その疾病が治癒し、復職可能な状態にあったと認められるかについては、疑問が残ると言わざるを得ない」と判断し、結論として、解職は有効であると判断しました。

休職期間の満了による退職の有効性が認められた事例(平成27年7月29日東京地裁判決)

本件は、私傷病により休職し、就業規則において定められた休職期間の満了を理由に退職扱いとされた労働者が、休職期間の満了時において就労可能な状態にあったため、退職の効力は発生していないとして、労働契約上の地位確認及び未払い賃金等の請求を行ったという事案です。本件では、休職事由が消滅していたのか否か、という点が主要な争点となりました。

この点、裁判所は、『就業規則における「休業の事由が消滅」とは、原告と被告の労働契約における債務の本旨に従った履行の提供がある場合をいい、原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合、又は当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合をいうと解される。また、労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供することができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った労務の提供があると解するのが相当である』として、従前からの最高裁判例(片山組事件)の考え方を確認しました。

そのうえで、本件については、労働者が総合職で、本件休職命令時の職位がA職群3級であったから、「休業の事由が消滅」というには、総合職3級を基準に上記の考え方による旨判断しました。そのうえで、具体的な事実関係を認定のうえ、結論として、原告には上記の意味で「休業の事由が消滅」していたとは言えないと判断しました。

なお、本件では、原告がアスペルガー症候群であったことに鑑み、原告は、アスペルガー症候群の特質を考慮したうえで「債務の本旨に従った労務の提供」の有無を判断すべきと主張していました。しかし、裁判所は、『法(※障害者基本法等、障害者保護を趣旨とする法律を指します。)の趣旨を踏まえた配慮がなされなければならないことは、当然である。ただし、前記(2)ウのとおり、雇用安定義務は努力義務であるし、合理的配慮の提供義務も、当事者を規律する労働契約の内容を逸脱する過度な負担を伴う義務を事業主に課するものではない。したがって、雇用安定義務や合理的配慮の提供義務は、使用者に対し、障害のある労働者のあるがままの状態を、それがどのような状態であろうとも、労務の提供として常に受け入れることまでを要求するものとは言えない』とし、原告の主張を容れませんでした。

※一言コメント

休職期間満了時に就労可能な状態にあるか否かが問題となる事例における先例となるほか、障害者保護関連法における使用者の義務と「債務の本旨に従った労務の提供」との関係について判断している点も参考となります。

最高裁判決確定後になされた休職命令及び休職期間満了による労働契約の終了の有効性が認められた事例(平成27年5月28日東京地裁判決)

本件は、会社が労働者に対し行った諭旨解雇処分の無効が最高裁判決により確定したため、当該労働者が会社に復職を求めたところ、会社が、労働者が心身の不調を理由に復職を拒み、休職命令を発令したうえ、休職期間満了と共に就業規則に基づいて退職(労働契約終了)扱いとしたことから、労働者が当該休職命令及び退職の効力を争った、という事案です。

本件では、休職命令の有効性(労働者に、休職命令を相当とするような心身の不調が認められるか)という点が争点となりました。この点、会社側は、労働者に精神的な不調があることを休職命令の理由として主張していました。

裁判所は、まず、「仮に精神的な不調の存在により原告が従前の職場において労務の提供を十分にすることができない状況にあると認められる場合であっても、本件労働契約において職種や業務内容が特定されていたことを認めるに足りる証拠はないから、原告の能力、経験、地位、被告の企業規模、被告における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして原告が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができるときは、なお、債務の本旨に従った履行の提供があったものと認められる余地がある」として、従来からの判例法理を確認しました。

そのうえで、本件の事実関係、証拠関係を検討した上、結論として「本件休職命令の時点で、原告には妄想性障害の合理的な疑いがあり、その意味において精神的な不調が存在したというべきである」とし、「そこで、進んで、被告社内において、このような精神的不調を抱える原告においてもなお労務の提供をすることができる現実的可能性があるような職場が存在していたか」を検討しました。

そして、妄想性障害の特徴を踏まえた上、医師の意見(原告は労働可能であるとする一方、会社における標準的な作業環境は、オフィス内で作業し、業務上必要があれば。社員の誰とでもコミュニケーションを取らなければならないという環境であるところ、原告が過去に他の社員から受けた嫌がらせの問題が未解決であるとの意見を有していることを踏まえると、被告における標準的な作業環境で原告が就労することには障害がある)を参照した上、在宅勤務の可能性についても「仮に、対人接触を最小限にするため在宅勤務の制度を例外的に適用したとしても、社内外との調整や、他の社員との共同作業が必要になることに変わりはなく、原告と業務上接触し、原告から加害者として認識される可能性のある他の社員の精神的健康にも配慮する必要がある」として、休職命令時点で、被告において、労働者が就労できる現実的可能性がある職場はないと結論づけ、原告の請求を認めませんでした。

休職期間の満期に復帰可能だったとは認められないとして、賃金の仮払いが認められなかった事例(平成27年1月14日横浜地裁決定)

本件は、会社側が労働者Xを休職期間満了により退職扱いしたことについて、Xが、これが不当である(休職事由は休職期間内に解消していた)として、労働契約が存続していることを前提に賃金の仮払いを求めた事案です。

本件では、会社の休職制度(傷病休職)において休職事由とされたXの傷病について、これが休業期間内に解決したか否かという点が争点となりました。

この点、労働者Xは医師の診断書を証拠として提出しましたが、これについて、裁判所は各診断書が作成された経緯を認定のうえ、「主治医の平成27年10月27日から通常勤務に問題がない旨の診断書は、債務者(=会社)から債権者(=X)に対し、休職期間満了の通知が届き、『焦って目が覚めたと言ってきて、会社に戻りたい、頑張ろうと思う』との話があったため、希望どおり書いたというものである(書証略)。これは、医学的に軽快したということが理由になっているのではなく、債権者の強い意向によることが理由と考えざるをえない。そうすると、債務者から債権者に宛てて出された平成26年10月10日付けで送付された休職期間が満了して退職となる旨の通知(書証略)を債権者が受領する以前に示された診断書(書証略)が、前記認定した主治医が債務者代理人に述べた債権者に関する病状とも整合しており、医学的にみた債権者の病状を示している」として、Xが事後的に提出した診断書の信用性を重視せず、Xの主張を認めませんでした。

療養休職期間満了時に休職事由が消滅したことを理由とする労働契約終了が否定された事例(東京地裁平成26年11月26日判決)

本件は、業務外での傷病(うつ病)を理由に傷病休暇及び療養休職を取得していた労働者に対し、会社側が、労働者の休職中に変更した就業規則「療養休職したものが復職する場合の復職とは従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行できる状態の勤務を行うことをさす。リハビリテーションとして短時間勤務等が必要な場合には、原則として休職期間中に行うものとする」を根拠に、労働者のうつ状態が従前の業務を通常に遂行できるほど回復するに至ったとはいえないとして休職期間満了により労働契約が終了したと扱ったことについて、労働者がこれを争ったという事案です。

本件では、①上記の就業規則が当該労働者に適用されるのか、②療養休職期間満了時において休職事由が消滅していたといえるのか、という点が争点となりました。

①について、裁判所は、まず、上記就業規則は、これまでの就業規則に規定されていなかった「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを復職の条件として追加するものであるとして、労働条件の不利益変更に当たるとしました。そのうえで、就業規則により労働条件を不利益に変更することが許される場合(労働者の受ける不利益の程度、労働条件変更の必要性、変更後の内容の相当性、等に照らして変更が合理的といえること。労働契約法10条参照。)には当たらないとして、変更後の就業規則は当該労働者には適用されない、と判断しました。

②については、当該労働者の主治医である医師の診断書(当該労働者が就労可能である、という内容)は十分に信用できるとして、休職事由は消滅していたと判断し、労働契約の終了を否定して当該労働者の請求を認めました。なお、会社側は、裁判において「主治医の診断内容が信用できない」旨の主張をしていましたが、裁判所は、仮に会社側がそう考えるのであれば、復職可否の判断の際に診断内容を吟味することができたはずであるのに会社側がこのような措置を取っていなかったこと等を指摘し、会社側の主張を認めませんでした。

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