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安全配慮義務の裁判例

安全配慮義務に関する裁判例

安全配慮義務に関する最新の裁判例について、争点(何が問題となったのか)及び裁判所の判断のポイントをご紹介いたします(随時更新予定)。

労働者の具体的疾患が認定されていない場合でも、長時間労働を理由とした安全配慮義務違反(慰謝料請求)が認容された事例(アクサ生命保険事件、東京地裁令和2年6月10日判決)

本件は、生命保険会社の従業員が、懲戒処分の無効や長時間労働に伴う損害賠償請求を求めた事案です。ここでは、長時間労働が安全配慮義務違反に当たるか、という点を取り上げます。

裁判所は、以下のとおり、安全配慮義務違反を認定し、長時間労働による原告の疾患は認定できないとしながらも、慰謝料10万円の支払義務を認めました。

(1)被告の安全配慮義務違反について
 B支社長によるパワーハラスメントを認めるに足りる証拠はないものの(上記3),本件期間における原告の毎月の時間外労働の時間数(1日8時間超過分と週40時間超過分の合計)は,別紙2のとおりである(上記5)。
 そして,原告が平成27年1月に育成部長に昇任して以降,B支社長は原告が所定労働時間を超えて就労していること,実際の退社時刻が午後7時ないし8時であったことを認識しており(証人B24~26p),A営業所長も,原告が短時間勤務の適用を事実上受けていたことについては当初から知っていたものの,原告の退社時刻はおおむね午後6時から8時頃であったとの認識を述べていること(証人A26~28p),平成28年11月24日の時点で,被告の□□労働組合が,各地区の「営業管理職オルグ」において,多くの営業管理職から深刻な長時間労働の実態について苦情が出されている状況を踏まえ,営業管理職の勤務状況等に関するアンケートを実施していること(上記1(4)ア),原告は,B支社長に対し,遅くとも平成29年3月頃には,長時間労働について相談し,その改善を求めたこと(上記1(3)エ),原告は,平成29年5月11日,G統括部長に対し,Cに対する原告のパワーハラスメントに関する事情聴取を受けた際,帰宅時間が20時ないし22時になってしまうこともあったこと,育児を理由とする短時間勤務制度があるから入社したが同制度の利用を認めてもらえないこと,B支社長及びA営業所長から,営業管理職は休日活動の振替休日を取らなくてよいと指導されたこと,育成部長になってから当初の一年間は全く休暇を取れなかったこと等を伝えたこと(上記1(3)コ),平成29年10月30日,むさし府中営業所が立川労働基準監督署から「営業社員に関して,週40時間を超え労働させているにもかかわらず,法定の率以上の割増賃金を支払っていないこと」「育成部長職の者に対して,法定の率以上の割増賃金を支払っていないこと」等を理由とする是正勧告を受けたこと(上記1(4)イ)(なお,同監督署からの勧告は,長時間労働の是正を直接促すものではないが,週40時間を超えて労働させていることの指摘を含んでおり,安全配慮義務違反を根拠付ける一事情として評価するのが相当である。),被告が組合との間で時間外労働及び休日労働に関する労使協定を締結したのは平成30年5月18日であること(上記1(4)ウ)等の事情が認められるのであり,これらを踏まえると,被告は,遅くとも平成29年3月から5月頃までには,三六協定を締結することもなく,原告を時間外労働に従事させていたことの認識可能性があったというべきである。しかしながら,被告が本件期間中,原告の労働状況について注意を払い,事実関係を調査し,改善指導を行う等の措置を講じたことを認めるに足りる主張立証はない(B支社長が,平成27年12月8日に,営業所長に提出すべきリストの作成業務について,時間外には行わないようにとのメール(乙27)を原告に送信していること等の事情は上記認定を左右するものとはいえない。)。したがって,被告には,平成29年3月から5月頃以降,原告の長時間労働を放置したという安全配慮義務違反が認められる。
(2)損害額について
 原告が長時間労働により心身の不調を来したことについては,疲労感の蓄積を訴える原告本人の陳述(甲25)に加え,抑うつ状態と診断された旨の平成29年4月1日付け診断書(甲28)があるものの,これを認めるに足りる医学的証拠は乏しい。しかし,原告が,結果的に具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても,被告が,1年以上にわたって,ひと月当たり30時間ないし50時間以上(1日8時間超過分と週40時間超過分の合計)に及ぶ心身の不調を来す可能性があるような時間外労働に原告を従事させたことを踏まえると,原告には慰謝料相当額の損害賠償請求が認められるべきである。
 そして,本件に顕れたすべての事情を考慮すれば,被告の安全配慮義務違反による債務不履行責任に基づく慰謝料の額としては,10万円をもって相当と認める。

長時間労働等による自死につき,安全配慮義務違反が認められた事例(Y歯科医師事件,福岡地裁平成31年4月16日判決)

本件は,歯科技工士として被告歯科医院で就労していた労働者が自死に至ってしまった事案(労災認定あり)につき,遺族が歯科医院側に対し損害賠償請求を行った事案です。

裁判所は,労働者の労働時間について「死亡の4か月前(平成25年12月9日から平成26年1月7日まで)を除き,いずれも145時間を超えている。このような亡A(※被災労働者)の労働時間や,(中略)亡Aの労働実態に照らすと,亡Aの業務は恒常的な長時間労働であったといえる」としたうえで,以下のとおり述べ,安全配慮義務(労働時間を適切に管理し,労働時間,休憩時間,休日,休憩場所等について適正な労働条件を確保し,労働者の年齢,健康状態等に応じて従事する業務時間及び作業内容の軽減等適切な措置を取るべき義務)の違反を認めました。

「被告は,従業員の労働時間を客観的資料に基づいて把握しておらず,労働時間に関する聞き取りなど,労働時間を把握するための措置も特段講じていなかったのであるから,被告による労務管理は不十分であるというほかない。

 被告は,平成25年頃,亡Aに対し,残業をした場合には,帰宅する際にDに連絡するよう指示したものの,同年8月までの間に,亡Aから,Dに対し連絡があったのは数回程度であり,同年9月以降,亡Aから連絡がなかったにもかかわらず,特段亡Aの労働時間を把握する措置を講じていなかったのであるから,これをもって,被告が,労働時間を把握するための措置を講じていたとはいえない。

 以上によれば,被告は,亡Aの労働時間を適正に関しるする義務を怠っていたというべきである。

(3)そして,長時間労働や過重な労働により,疲労やストレス等が過度に蓄積し,労働者が心身の健康を損ない,ときには自殺を招来する危険があることは,周知の事実である。

 そうすると,被告は,亡Aの労働時間を適正に管理しない結果,同人が長時間労働に従事して死亡に至ることを予見することが可能であったというべきである。

(4)これに対し,被告は,被告が亡Aにおいて被告歯科医院に残って業務に従事したことを認識し得なかった事情の一つとして,被告及びBが,亡Aの制作する義歯や補綴物の進捗状況を確認していたため,亡Aが診療時間後に業務に従事していたとは考えられないことを主張する。

 しかし,被告は,亡Aよりも先に帰宅しており,少なくとも亡Aの診療時間終了後における業務の進捗状況は確認できていないし,Bは,被告歯科医院に勤務していないのであるから,亡Aが診療時間内に業務を終了できたかどうかまでは確認できないのであって,被告やBにおいて,亡Aの制作する義歯や補綴物の進捗状況を確認していたことをもって,亡Aが診療時間後に業務に従事していなかったとはいえないし,被告において,亡Aが,被告歯科医院に残って業務に従事していたことを認識し得ない事情になるともいえない。よって,被告の主張は採用できない。

 また,被告は,被告歯科医院の警備会社から,亡Aが連日のように毎日夜遅くまで被告歯科医院に残っているとの連絡を受けたことがなかったこと,被告が,外出先から帰宅した際に被告歯科医院に亡Aが残っていることを発見したときには,翌日に亡Aに被告歯科医院に残っていた理由を問い質しても答えてもらえなかったので,業務には従事していなかったと考えたことからすれば,被告が,亡Aが診療時間後も被告歯科医院に残って業務に従事していたことを認識し得なかったと主張する。

 しかし,被告は,亡Aに被告歯科医院の鍵を預けており,診療日において,被告歯科医院から最後に帰宅するのは亡Aであることを認識していたことに加えて,亡Aが,平成16年頃から,勤務時間中に居眠りをするようになり,平成21年頃から,集中力がないなど業務中の様子に異変があったため,亡Aに対し,心療内科を受診するように勧めていたことからすれば,亡Aが,診療時間終了後も被告歯科医院に残って業務に従事し,継続的に長時間労働していることや,これによって心身に異常を来している可能性があることを認識し得たといえるから,被告の主張は採用できない。

(5)以上によれば,被告は,亡Aの労働時間を適切に管理せず,長時間労働に従事させたものであるから,安全配慮義務違反が認められ,被告の安全配慮義務違反と亡Aの死亡との間には,因果関係が認められる。なお,原告は,被告の故意による不法行為が認められる旨主張するが,これを認めるに足りる事情はなく,原告の主張は採用できない。」

具体的な疾病は発症していなかったが,長時間の労働による精神的苦痛を理由に慰謝料を認容した事例(狩野ジャパン事件,長崎地裁大村支部令和元年9月26日判決)

本件は,工場においてミキサーに小麦粉を入れる等の作業に従事していた労働者が,長時間労働に伴う残業代請求及び慰謝料請求を行った事案です。

本件において,裁判所は,要旨以下のとおり述べ,長時間労働において原告に具体的な疾病が発症したとは認定しなかったにもかかわらず,安全配慮義務違反に基づく慰謝料請求を認めました。

「本件において,原告が長時間労働により心身の不調を来したことについては,これを認めるに足りる医学的な証拠はない(略)。

 しかしながら,結果的に原告が具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても,被告は,安全配慮義務を怠り,2年余にわたり,原告を心身の不調を来す危険があるような長時間労働に従事させたのであるから,原告の人格的利益を侵害したものといえる。

 被告の安全配慮義務違反による人格的利益の侵害により原告が精神的苦痛を受けたであろうことは容易に推察されるところ,本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,上記精神的苦痛に対する慰謝料は,30万円をもって相当と認める。」

※前提として,「被告は,原告に対し,従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して原告の心身の健康を損なうことがないように注意すべき義務」という安全配慮義務及びその違反が認定されています。

労働者の疾病につき,安全配慮義務違反は否定したが,当該労働者について「病気休職」と公表したことについて,損害賠償を認めた事例(佐賀県立高校事件,佐賀地裁平成31年4月26日判決)

本件は,県立高校の教員であった原告労働者が,過酷な通勤,勤務により精神疾患を発症したことが県の安全配慮義務違反であるとして,損害賠償を請求した事案です。原告は,併せて,県が原告につき病気休職であることを公表した点について,プライバシー侵害に当たるとして慰謝料100万円を請求していました。

裁判所は,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求は棄却しましたが,プライバシー侵害の点は,以下のとおり述べ,10万円の慰謝料を認容しました。

「本件掲載等(※注:高校で作成し生徒に配布している学校だより(X1だより)において,原告につき「病気休暇」と記載したこと,これを生徒に配布したこと,これを学校ウェブサイトに掲載したことを指す。)は,原告が病気休暇を取得していることを不特定多数人に明らかにする行為であるところ,個人の健康状態,心身の状況,病歴等に関する情報は,通常は他人に知られたくない情報である。したがって,本人の同意を得ることなく,これをみだりに公表することは許されない。

 被告は,情報の秘匿性が高くない,掲載の必要性・正当性がある,具体的不利益が生じていないとして,本件掲載等は受忍限度内であると主張する。

 しかし,病気であることは,本人に不利益を生じさせ得る情報であるから,通常は他人に知られたくない情報であって,その秘匿性が高くないなどとは到底いえない。(略)原告が病気休暇であることが記載されたのは,本件X1だよりの転出者欄であるところ,原告は,このとき転出者ではなかったから,掲載の必要性も認められない。本件X1だよりが発行された平成23年4月から1年数か月が経過した平成24年8月30日になって,広範囲の人が閲覧可能なウェブサイトにこれを掲載する必要性も認められない。

 個人の私生活上の自由のひとつとして,何人も,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有しており,他人に知られたくない個人に関する情報をみだりに開示又は公表されないことに係る利益は,法的保護に値すると解される。本件掲載等により,原告は,他人に知られたくない病気休暇を取得した事実を公表されたのであるから,これによって,上記の利益を侵害され,精神的苦痛を受けたと認められる。

 したがって,本件掲載等は,国家賠償法上の違法性を有する。」

「本件掲載等により,原告の病気休暇が公表されたものの,病気の詳細は明らかにされていない。本件X1だよりの配布先は当時の生徒であり,本件X1だよりがウェブサイトに掲載されたのは,5か月弱(平成24年8月30日~平成25年1月22日頃)である。学校のウェブサイトを閲覧する者の多くは,生徒,保護者,教職員などの学校関係者であるのが通常である。これらの事情を踏まえると,本件掲載等により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は,10万円と認める。」

従業員同士の暴行(喧嘩)につき,会社の安全配慮義務及び使用者責任を否定した事例(Y社事件,横浜地裁川崎支部平成30年11月22日判決)

本件は,従業員Dが原告に対し勤務中に暴行を加えた件について,原告がD及び会社に対して損害愛称を請求した事案です。

本件では,暴行の有無及び正当防衛の成否についても争われましたが,裁判所は,Dの加害行為についてはこれを違法なものと認定しました。そのうえで,ここでは,会社の使用者責任及び安全配慮義務違反の点を取り上げます。

1 使用者責任(民法715条)について

「被用者の暴行が,使用者の事業の執行についてされたかどうかは,当該暴行が使用者の事業の執行を契機とし,これと密接な関連を有すると認められるかどうかによって判断するのが相当である(最高裁昭和44年11月18日第三小法廷判決・民集23巻11号2079頁参照)。

(中略)

まず,被告Dの業務上のミスを指摘したり,同被告の業務上のミス等に関する報告書を作成することが,原告の業務であったかどうかについて検討するに,前記前提事実及び証拠(証拠略)並びに弁論の全趣旨によれば,かえって,①平成26年4月当時の原告の担当業務は,利用者からの緊急コール時の応対を中心とするオペレーター業務であって,ケアスタッフ等(※注:被告Dを含む)に対する指導・注意等は業務内容となっておらず,浦安事業所の責任者に無断で利用者に謝罪することや,同責任者の指示や依頼なくしてケアスタッフの業務上のミスや利用者からのクレーム等に関する報告書を作成することも,原告の担当業務には含まれていなかったこと,②浦安事業所の責任者であったGが最初に本件トラブル等について知らされたのは,同月20日午前7時40分頃,原告から本件暴行被害の話を聞いたHが,Gに連絡をした時であって,それより前にGが原告から電話で本件トラブル等の報告を受けたり,報告書の作成を原告に依頼したりはしたことはないこと,③本件暴行当日以降,原告が本件トラブル等に関してGや被告会社に報告書を提出したことはないことが認められる。

(中略)

上記認定事実によれば,むしろ,ケアスタッフに業務上のミスがあった場合の指導や注意,ケアスタッフの業務上のミスや利用者からの苦情に関する報告書の作成は,原告の担当業務には含まれておらず,本件トラブルは被告Dのミスであるから報告するとの原告の発言や,原告が報告書の作成と称して行っていたパソコンの入力作業は,原告の業務として行われたものでなかったことが認められる。

 また,被告Dに本件トラブルの原因となる業務上のミス等があったかについて検討するに,証拠(略)によれば,そもそも,被告会社は,本件通報装置の電源の接続状態の確認作業を,ケアスタッフの訪問介護時の業務内容としていないことが認められる。(中略)本件トラブルの原因は,平成26年4月20日当時,原告が,利用者宅から本件通報装置による緊急コールがあった場合にこれに応答するための本件受信装置の操作を理解しておらず,本件受信装置を適切に操作することができなかったことにあったことが認められる。

(中略)

以上検討したところによれば,むしろ,被告Dには原告主張の業務上のミスはなく,本件暴行の原因となった原告の言動は,原告の担当業務の遂行には当たらないことが認められる。

(中略)

かえって,(略)原告と被告Dは,初対面の時から互いに相手に対して不快な感情を抱き,その後も,互いに相手の態度や発言に反感を抱き,原告とは親しい関係にあるHが従前から同被告と対立関係にあったとの事情もあって,相手に対する敵対的な感情を相互に強めていたところ,平成26年4月20日,原告が,同被告に対し,同被告は仕事ができず,他の従業員に迷惑をかけているとの同被告を貶める発言や,本件トラブルの原因は同被告のミスなので報告するなどとの事実に反し同被告を貶める発言をしたこと等から,これに憤激した同被告が,原告からパソコンを取り上げようとし,原告が同被告の右手首をつかんでひねったことがきっかけとなって,同被告が本件暴行を開始したことが認められる。

 上記認定事実によれば,本件暴行は,被告会社の事業所内において同被告の従業員同士の間で勤務時間中に行われたものではあるが,その原因は,本件暴行前から生じていた原告と被告Dとの個人的な感情の対立,嫌悪感の衝突,原告の同被告に対する侮辱的な言動にあり,本件暴行は,私的な喧嘩として行われたものと認めるのが相当である。」

裁判所は以上のように述べ,暴行が「事業の執行について」なされたこと(=会社の使用者責任)を否定しました。

2 労働契約上の安全配慮義務違反について

「本件暴行は,原告が被告会社に入社してからわずか3回目の勤務日に行われたこと,原告の担当業務は浦安事業所内の夜間オペレーター業務である上,原告の勤務時間帯は,平成26年4月当時は週末の夜間又は祝日から翌日にかけての夜間のみであり,一方,被告Dの担当業務は巡回訪問介護業務であって,両者が顔を合わせる機会は,同被告が夜勤の場合であっても,1日当たり1,2時間程度,原告の被告会社入社日から本件暴行日までのこれらの時間を合計しても4時間程度に止まることが認められる。

 また,被告Dが,平成25年12月19日の被告会社入社後,本件暴行前に,他の従業員に対し暴行を加えたことがあったなどの事情や,原告と同被告との間が険悪な状態となっているとの報告や情報が本件暴行前に被告会社に寄せられたなどの事情も,本件全証拠によっても窺われない。

 上記認定事実等に照らせば,平成26年4月19日及び同月20日当時,被告会社において,被告Dが原告に対し暴行に及ぶ可能性があることを予見することが可能であったとはいえないから,本件暴行について被告会社に結果回避義務があったということはできない。」

裁判所は以上のように述べ,会社の安全配慮義務も否定しました。

社内の健康診断で実施された視力検査について、安全配慮義務の違反が認められなかった事例(甲社事件、東京地裁平成28年8月2日判決)

本件は、目に障害があり、会社との間で障害者雇用枠での雇用契約を締結して就労していた労働者が、社内で実施された視力検査で受傷したことが会社の安全配慮義務違反に当たるとして、損害賠償を求めた事案です(その他、労働者側は、パワハラ、雇用関係確認に関する請求もしていましたが、いずれも認められませんでした。詳細は本項では割愛いたします)。

この点、裁判所は「検討するに、原告が主張する安全配慮義務は、企業が実施する健康診断で却って従業員の健康を損なう結果を招来することのないように配慮すべき義務であり、抽象的に配慮を求めるというのではなく、具体的な措置を求め、この措置がとられなかった、あるいは不十分であったために従業員に生じた健康被害について、企業が義務に違反したものとして法的責任を問うものであるから、このように義務違反を認定して法的責任を問う前提として、義務自体が特定されている必要があり、当該健康診断のどの検査にどのような危険因子が存在し、どのような健康被害が想定され、これを防止するためにどのような措置が必要なのか、当時の医学的知見に照らし、具体的に特定し得ることが必要であるとともに、かかる措置を企業に義務付けることが社会通念上相当であることを要する」という一般論を示したうえで、

「これを本件について見るに、たしかに、原告に一定の眼痛が発症し、それが本件健康診断の際に視力検査を受けたすぐ後であったことは、証拠(書証略)及び弁論の全趣旨からうかがわれるので、本件健康診断の際の視力検査と原告の眼痛との間に上卦関係が存在することは否定できないが、原告の有するてんかん及び左同名半盲との関係は明らかではなく、原告のようにてんかん又は同名半盲の障害を有する者に視力検査を受診させると、どのような理由で危険なのか、医学的に十分に解明され、そういった医学的知見が共有されていると認めるに足りる証拠はない」等の理由を挙げて、被告の安全配慮義務違反を否定しました。

※一言コメント

安全配慮義務については、義務内容及びその違反を具体的に特定すべきという判旨の一般論は特段真新しいものではなく、首肯できるものと考えます。

受動喫煙、関節痛等に関する安全配慮義務の違反が認められなかった事例(積水ハウス事件、大阪地裁平成27年2月23日判決)

本件は、労働者が会社に対し、①勤務先で恒常的に受動喫煙を強いられていたにも関わらず、会社が受動喫煙対策を講じなかったために受動喫煙症等に罹患したこと②労働者が関節チウマチに罹患していたにも関わらず、手足に負担のかかる業務に従事させられ、関節痛や手首等の機能障害を被ったこと、がそれぞれ会社の安全配慮義務違反に当たるとして、損害賠償請求をしたという事案です。

本件では、①②についての会社の安全配慮義務違反の有無が争点となりました。

この点、裁判所は、①受動喫煙については、会社の配慮義務を特定しない形で喫煙に関する事実関係を認定した上、「これらの諸事情によれば、被告は、法改正等を踏まえ、原告を含む従業員が本件工場内で受動喫煙状態になることがないよう、原告の申出を受ければ、その都度、相応の受動喫煙防止のための対策を講じてきたものであり、原告が、被告での勤務において、受動喫煙状態を強いられていたとまでは評することはできないのであって、被告が受動喫煙に関する安全配慮義務に違反したとまで認めることはできない」として労働者の主張を認めませんでした。

また、②については、会社の安全配慮義務の内容として「被告は、原告が関節リウマチに罹患しており、重量物の運搬は不適当であることを認識の上、障害者枠の嘱託社員として原告を雇用したものと認められ、被告は、原告に対し、原告の身体障害が自然経過によるもの以上に悪化することのないようその業務内容に配慮する義務を負っていた」としました。そのうえで、原告の業務内容に関する事実を認定の上、結論として「被告は、原告からの申し出を受ける度に、原告との面談を行うなどして、その希望や健康状態等を聴取し、ときに産業医と相談するなどして、関節リウマチに罹患していた原告の身体に配慮し、原告にとって無理がなく、なるべく負担の少ない作業をその都度検討し、原告の了承を得た上で、代替作業の提案等、原告の要望に合致するような作業を提案するなどしてきたものといえる」として、会社の安全配慮義務違反を否定し、労働者の請求を認めませんでした。

※一言コメント

①②ともに、会社の安全配慮義務違反が問題となったものですが、具体的な義務内容が認定されたのは②のみという点が特徴的です。本判決は、①について「原告が、被告での勤務において、受動喫煙状態を強いられていたとまでは評することができない」として、そもそも労働者に受動喫煙による被害が生じていないため、安全配慮義務違反は問題にならないというロジックで労働者の請求を否定しています。①は、②に比べ、会社としてどこまでの対応をするべきかという線引(=企業の安全配慮義務としてどのような内容を定めるか)をすることが難しかったものと思われ、受動喫煙に関し企業が講じるべき安全配慮義務がどのようなものか、という点については、今後の裁判例の集積に委ねることになります。

心筋梗塞を原因として死亡した労働者(労災認定あり)について、発注元・元請業者等の安全配慮義務違反を否定した事例(甲社ほか事件、静岡地裁平成26年12月25日判決)

本件は、原子力発電所での事故復旧作業に従事していた労働者が、作業中に心筋梗塞で死亡したことについて、当該労働者の妻が、当該労働者の雇用先(四次下請け)ではなく、発注者、元請け、一次下請け、二次下請けの各社に対して、安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求をしたという事案です。

この点、裁判所は「元請会社ないし発注者と下請会社(孫請会社を含む。以下同じ。)の労働者との間には直接の労働契約はないものの、下請業者の労働者が労務を提供するに当たって、いわゆる社外工として、元請会社ないし発注者の管理する設備、工具等を用い、事実上元請会社ないし発注者の指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容も元請会社ないし発注者の労働者とほとんど同じであるなど、元請会社ないし発注者と下請会社の労働者とが特別な社会的接触関係に入ったと認められる場合には、労働契約に準ずる法律関係上の債務として、元請会社ないし発注者は下請会社の労働者に対しても、安全配慮義務を負うというべき」として、一般論としては労働者が雇用先以外に安全配慮義務違反の責任を問う可能性を認めました。

しかし、本件においては、事実関係を検討のうえ、当該労働者と各社との間には、いずれも、上記のような特別の社会的接触関係に入ったものとは認められないとして、結論としては各社の安全配慮義務違反の責任を否定しました。

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